■残念ながら『silent』になれず
同枠ドラマは、23年のスタート時は大御所を起用していたが、今年4月期から若手脚本家を抜擢。本作の兵藤氏はキャリア4年。繊細な描写や言葉遣いは坂元裕二氏の影響があるそうで、同じく坂元氏の影響を受けている、『silent』(フジテレビ系)の生方美久氏を思い浮かべてしまう。当然、制作側も大ヒットした一連の生方作品を意識しているだろう。
しかし、数字はそれらに並ぶことはできなかった。全体のトーンは似ているが、視聴者の指摘通り刺激が少なすぎる。生方氏作の今夏のドラマ『海のはじまり』は突然、主人公が父親になり、『いちばんすきな花』(ともにフジテレビ系)は生きづらさを前面に出すなど、ドラマとして強いフックがあったが、本作にはない。ひたすら心地よいだけでは、坂元脚本界隈のファン以外の視聴者は、さすがに見続ける気になれないのではないだろうか。
キャストには、清原、吉川、見上、佐野と、若手の演技派をそろえたが、初回の平均世帯視聴率が3%台、さらに、配信サービス・TVerのお気に入り登録も30.0万(10月24日午後1時現在)と深夜ドラマレベル。初回の数字がこれでは、今後も厳しそうだ。特に清原は、地上波ドラマでは苦戦続き。
とはいえ、まだ『マイダイアリー』は始まったばかり。それに、兵藤るり氏は昨年、『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)でギャラクシー賞を受賞するなど、若手だが確かな実力を持つ脚本家だ。本作が、静かながらも大きなうねりを作り出していけるのか、今後に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。