■教育の道を志す若人は塾講師に

 今、こうした環境を嫌って、学校教員ではなく、学習塾の講師を選ぶ人が増えている。

 では、給与面ではどうか。

「塾講師の初任給は正社員の場合、平均で25万円程度、学校教諭の初任給は、小中高ともに、大卒20~21万円で短大・専門卒が18万円が相場です」(前出のリクルートサイト社員)

 額面でも、やや塾講師が魅力的か。

「拘束時間も短く、サービス残業はしなくていいというような塾は増えています。“残業の多い学校の教師をやるなら、学習塾の方がコスパも良い”という考え方の人は多い。副業も自由なので、家庭教師との二足のわらじも可能ですから」(前出の松本氏)

 だが塾講師の場合、非正規雇用の形態が多く、不安定。福利厚生やボーナスがないことを不安視されてきた。

「たしかに福利厚生という点では、学校教員はしっかりしています。公務員なので妊娠出産の休職中の育児手当て等も手厚いです。通常、給与は年齢によって上がっていくケースが多いですが、私立の場合、指導力に優れた先生を長く置いておきたいという所があるので、実力で評価する制度もあるようです」(前同)

 働く場所によって違いは出るが、安定を求めるなら公務員である学校教員も悪くないのでは。

「塾講師は、経営のノウハウを学んで独立という形も選択出来ます。広告宣伝や塾運営などの経営のノウハウは確立されていて、独立が成功するケースは多いです。テレビで活躍されている人も多いですし、実力、人気次第で億万長者も夢じゃないですよ」(前同)

 働き方においてはっきりと特徴が分かれる両者。今後はどうなっていくのだろうか。

「教師から塾講師に転職する人が多くなり、引き続き学校教員は苦しい学校運営を任されていく傾向が続くでしょう。一方、学習塾も、少子化の影響で、生徒が減っているので、実績のある塾だけが生き残る厳しい世界になるはずです」(同)

 先の見えない教育現場のサバイバル時代。

 稼げる夢のある塾講師と、過酷だが安定した学校教員。

 未来ある若者たちが選ぶのはいったいどちらか――。

松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト 専門は大学改革支援・学位授与機構。日本テレビ「DayDay.」、フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。著書短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒 学修成果レポート作成入門(オクムラ書店)