■深澤辰哉には荷が重かったか
それもあってか、TVerの成績は好調。しかし、懸念材料もあって、X上では《冬月役の人の演技が下手すぎてドラマに入りきれず見ててしんどい。あと、35歳の設定にしては髪型も服装も幼くて魅力的に見えないし、田中圭と張れる存在になっていない》など、深澤の演技を疑問視する厳しい声も出ている。
たしかに、深澤には力不足を感じる。いいやつのときはいいやつにしか見えないし、ヤバそうなときはヤバそうにしか見えず、おもての顔に隠れた別の顔が透けて見えてこないのだ。また、不倫ドラマの醍醐味は、それぞれが純粋に好きな気持ちを持っているのに、それが許されず悶々としながら、想いに負けて一線を超えてしまうところ。冬月はそこに至る複雑な感情が見えないので、ただのヤバいヤツになっている。
これでは、冬月が美羽の家庭を壊そうとする、ただの敵役にしかなっていない。深澤が冬月の複雑な感情を表現できていれば、冬月の行動も共感できるものになり、三角関係の切なさやるせなさが深まったと思われるが……。
予告動画には、真琴が「結婚してて他の人のことを好きになるなんて、絶対にダメじゃないですか」と、美羽を非難しているようなセリフに続き、宏樹に向かって「ずっと宏樹さんのこと好きでした。だから私、美羽さんのことが許せない」と、告白したうえで不倫を暴露するようなシーンが見られる。
そのため、次回に向けて真琴に注目が集まっているが、いずれ、冬月は宏樹と対峙しなければならなくなるだろう。今後、深澤が冬月をただのヤバいヤツで終わらせず、ドラマに深さを与える演技ができるか注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。