日本の食卓に欠かせない“みそ汁”。
実は、栄養面で非常に優れたメニューであることをご存じだろうか。
「みその原料である大豆は、植物性タンパク質が豊富。みそ汁はスープ自体が栄養満点ですし、どんな具材とも相性がよく、一品で栄養バランスが取れた完全食を手軽に作れます」
こう語るのは、『健康長寿をのばす! みそ汁&食事術』(主婦の友社)の監修を務めた『渡辺クリニック』(愛知県)院長の渡辺正樹氏だ。みそ汁は年齢によって具材を変えると、健康長寿の強い味方になるという。
「健康長寿を脅かす最大の脅威は認知症ですが、その認知症の約7割を占めるアルツハイマー病は50 代・60代・70代の3段階で進行します。その進行に合わせて適した具材を選ぶことで、効果的に予防できるんです」(渡辺氏=以下同)
そこで今回は、渡辺氏に、年代別に具材を選んだ“理想のみそ汁レシピ”を教えてもらった。
まずは50代。ポイントは、内臓脂肪を減らしてメタボを解消することだ。
「おなかのメタボと頭の認知症は無関係に見えますが、それは間違い。なぜなら、内臓脂肪が、アルツハイマー病の原因物質の“アミロイドβ”を急増させる要因だからです。アミロイドβは、50代後半から徐々に増えていくので、その緩和にはメタボ解消が一番です」
そのために役に立つのが、サバ缶とワカメの魚介系具材だ。
「サバに含まれる“EPA”には、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪を抑制して、内臓脂肪の蓄積をブロックする働きが。ワカメは食物繊維が豊富で、胃腸の脂肪を洗い流してくれるので、ダブルで効果的です」
■年代によって必要な具材が変化
60代は、カボチャや納豆を入れるのが良いという。
「60代になると、加齢に伴い脳の神経細胞が弱って、アミロイドβへの抵抗力が落ちます。脳がストレスを受けると、活性酸素が増える。その活性酸素がアミロイドβの攻撃を後押して、脳にダメージが蓄積されてしまいます」
それを防ぐには、活性酸素そのものを減らすことが重要だ。
「活性酸素を減らす “ビタミンE”を含んだカボチャが効果的です。また、みそや納豆のような発酵食品には、活性酸素などの毒を体外に吐き出す作用がある。なので、納豆汁を食べるのも理にかなっています」
70代は心身が虚弱になる“フレイル”が起きやすい年代。筋肉や臓器はもちろん、脳の神経ホルモンも減ってしまうので、全身を元気にするものを食べたい。
「筋肉や臓器、ホルモンの原料はタンパク質なので、みそ汁で補充しましょう。具材は、“おいしそう”と、食欲をかきたてるものを。カニや牡蠣、牛肉など豪華なものをたっぷり入れて、“これを食べれば元気になる”と思えるみそ汁をぜひ」
これからの寒い季節、みそ汁を飲んで英気を養おう。
渡辺正樹(ワタナベ・マサキ)
愛知県名古屋市・渡辺クリニック院長。 神経内科認定医、医学博士。 名古屋大学医学部卒業後、名古屋第一赤十字病院の副部長等を経て、エスエル医療グループに参加し、認知症・動脈硬化・自律神経失調症・脳卒中などの神経に関する疾病を専門とする現在のクリニックを開業した。