■深澤辰哉はなぜ浮いている?

 深澤は俳優のキャリアが浅く、演技が平面的なのは仕方ない。ただ、演技以外のところで、『昼顔』の斎藤工(43)や、『あなして』の岩田剛典(35)という、ヒロインの不倫相手と比べると、どうしても見劣りしてしまう。それは男としての色気の差。愛する人と対峙するときはもちろん、仕事しているときや思いにふけるときなど、なんてことのない振る舞いの中にも、斎藤や岩田は色気があった。深澤には、残念ながらそれが足りないのだ。

 X上でも、《冬月って絶対「抜群にかっこよくて演技も上手い人」じゃないと成立しない役よな〜…『昼顔』では斎藤工だったし、『あなたがしてくれなくても』は岩田剛典だったのにね》などと、過去作の2人と比べてしまうという声があった。

 不倫ドラマで視聴者が惹かれるポイントは、キャラが“いけないこと”をしてしまうのに、共感してしまうところ。だからこそ、許されない恋を見ながら身悶えしてしまう。だが、深澤は色気不足のため、「なぜ美羽はこの男と?」と、つい思ってしまう。登場人物の中で冬月一人が浮いているように見えるのは、そのためだろう。

 斎藤工と岩田剛典も「この相手なら惹かれるのはしかたない」と思わせる色気があったし、だからこそ『昼顔』と『あなして』は盛り上がった。三竿プロデューサは、この2作と『わたしの宝物』を3部作と称しているので、深澤の起用には同様の期待があったと思われるのだが……。

 次回の予告動画には、宏樹が「残酷だな美羽は。なんで俺の子って嘘ついたの?」と問い、真琴が冬月を「宏樹さんと栞ちゃんになにかあったら、あなたのせいです」と責めるセリフがあり、さらに修羅場が続きそうだ。これまでの批判は仕方ないと思うが、今後、深澤が色気のある冬月を演じることに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。