■過去から言われていた「スケジュール問題」
「冬映画」が終了するのは、筆者もいちファンとして非常に残念である一方、ファンの声にもあるように、撮影スケジュールの過酷さは前々から言われていた問題でもあった。
『仮面ライダー』は撮影が超ハードなことで有名で、出演者から“帰宅後に玄関で寝てしまった”、“3時間睡眠が1か月続いた”など、驚くようなエピソードが語られることも多い。『仮面ライダーエグゼイド』(2016年10月~17年9月末)のほぼ全キャストや、『仮面ライダードライブ』(14年10月~15年9月末)の主演・竹内涼真(31)が分かりやすいが、物語中盤から俳優の顔が“激やせ”している作品も珍しくない。ついでに言うと、髪もカットに行く余裕もないのかと思えるくらい、回を追うごとに伸びていくのがお約束だ。
また、『仮面ライダー』のスケジュールに関しては、2001年から恒例の「夏映画」、今回話題となっている「冬映画」だけでなく、オールスター系の「春の大戦映画」や、それに関連したネットムービーなど、現行作品の撮影の大きな負担となる派生作品が乱立されていた時期もあった。オールライダーが織りなす映像的な楽しさはともかく、脚本があまりにも雑な作品も多かったが、これもそもそも制作スケジュールがカツカツすぎたのが根本の理由ではないかと言われている。
最近の作品で言えば、『仮面ライダーギーツ』(22年9月~23年8月末)の夏映画にはチョコレートプラネット・長田庄平(44)がラスボス役で出演していたが、公開日が7月28日なのに、オファーは5月中旬だったことが明らかになっている。チョコプラの売れっ子ぶりを考えると、どう考えても遅い。
もちろん東映もこういった状況を改善しようとしているだろうし、だからこそ『仮面ライダーガヴ』は働き方改革を強く意識して、例年よりも早撮りで制作されている。その甲斐あってか、例年に比べてCGやアクション演出のクオリティが向上している印象を受ける。
また、動画配信サービス『東映特撮ファンクラブ』では「アウトサイダー」(ならず者)な仮面ライダーが集結する『仮面ライダーアウトサイダーズ』など、現行作品とは別方面でのスピンオフドラマを展開するなど、現行作品の俳優の負担にならないやり方を模索している感じもする。
毎年続いてきた「冬映画」が節目となる15年目に公開されないのは残念なことだが、その分、役者・スタッフの負担が減り、作品の質も向上していっているはず。テレビ本編に前作ライダーがゲスト出演するパターンもあり得るし、まずは気持ちを切り替えて、テレビ本編を楽しもうではないか――。
特撮ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受ける。その後、歳を重ねても熱量は衰えず『クウガ』から始まる平成仮面ライダーシリーズと現在も歴史が続く令和ライダーはすべて履修し、『スーパー戦隊シリーズ』、平成以降の『ウルトラ』シリーズも制覇済み。『仮面ライダーゴースト』の主人公の決め台詞でもある「俺は俺を信じる!」を座右の銘に仕事に全力全開。