■『silent』以上のチャレンジだったが…

 同性への想いがテーマだった今回。周囲の無理解や自身との葛藤など、いくらでも波風が立つストーリーに仕立てられたはずなのに、いつもどおりの穏やかな展開だった。初回に描かれた広海の、数学に特異な才能を持つギフテッドという設定もサラッと描いたが、ここまでアンチセンセーショナリズムを貫くのは、ある意味ですごい脚本だ。

 同じように細かな心情表現を得意とする生方美久氏の脚本でも、『silent』なら主人公の交際相手が耳が聞こえなくなるという設定。『いちばんすきな花』(ともにフジテレビ系)なら4人の主人公それぞれの、他者との思い切り気まずい時間など、引っ掛かりを作って視聴者を引き込んでいた。

 しかし、『マイダイアリー』には、そんな引っ掛かりはない。ある意味で『silent』や『いちばんすきな花』より過激で挑戦的な作品といえる。

 そんな作品を地上波ドラマでやるという覚悟は、まさにあっぱれ。しかし、X上でも《繊細すぎて、丁寧すぎて、それで滑っている。それはドラマとしては決してウケない》と指摘されているように、残念ながら需要はあまりなかったようだ。連続ドラマでなく映画作品だったら、評価はまた違ったかもしれない。

 視聴率、TVerのお気に入り登録数ともに惨敗状態で、注目こそされていないが、たしかに『マイダイアリー』は良作。次回は再び広海(佐野)のギフテッドが描かれるようだ。食わず嫌いせず、一度、見てみてはどうだろうか。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。