■交配の歴史で見る猫と犬の違い

 さらに、人間との関わり合いの歴史を紐解くと、両者の違いがより浮き彫りになってくる。前出の獣医師の山本氏が語る。

「猫は人間とコミュニケーションを取って暮らすというよりは、穀物や食べ物に近寄るネズミ退治としての役割を担う存在でした。それが近代になると、いわゆる愛玩動物、ペットとして扱われるようになっていきました。特に、ここ50年ほどで、マンチカンの短足のような外見的な特徴がある品種の交配が増えましたね。これは人が猫にネズミ退治よりも、かわいさを期待するようになったことが理由でしょう」

 一方で、犬は古くから人間をサポートする存在だったという。

「犬と人間の関係の歴史は古く、およそ1万8000年前からと言われています。最初は番犬や狩猟の手伝い、その後、ソリを引かせるなど時代とともに犬の役割は増えました。猫以上に人間に身近であった犬は、役割に応じて、優秀な犬同士が交配されていきました。その結果、例えばゴールデン・レトリバーはもともと、撃ち落とした鳥を回収する狩猟犬でしたが、その知能の高さと従順さから現在では盲導犬としても活躍しています」(前同)

 人間の手によって、別々の進化を遂げてきた猫と犬。その愛らしさには差がないと言えるだろう。

山本宗伸(やまもと・そうしん)
猫専門病院「Tokyo Cat Specialists」院長。日本大学獣医学科外科学研究室卒業。獣医学生時代から猫医学の知識習得に力を注ぐ。