■『闇バイト』という名称について、警視庁・警察庁の見解は
社会問題化した事件のワードについて、“犯罪の実態にそぐわない”として名称が変更されたケースは過去にもある。前出の全国紙社会部記者が振り返る。
「記憶に新しいのは『オレオレ詐欺』に代わる『振り込め詐欺』。電話口で“オレだよ、オレ”などと親族になりすましてお金を要求する詐欺は2003年頃に広まり、通称『オレオレ詐欺』と呼ばれていましたが、手口の多様化を理由に、警察庁は2004年、『振り込め詐欺』と命名しました。
さらに2013年頃からは犯人が直接金銭の受け渡しをする手口が増えたため、名称と実態に乖離があるとして、同年3月に警視庁が新名称を公募。その結果、最優秀作として『母さん助けて詐欺』が選ばれています。その新名称が広まることはありませんでしたが、改名の検討がなされたことは事実です」
他にも名称が再考されたのは「危険ドラッグ」だ。2014年、それまでの「脱法ドラッグ」では薬物の危険性を十分に表現できていないとして、警視庁と厚生労働省が協力し、名称を公募した。応募作にはリスクを表す語頭の「危険」と、薬物を表す語尾の「ドラッグ」が多数見られたため、それらを組み合わせた名称に変更されたという経緯だ。
これらの例を踏まえると、名称に対する疑問の声があれば、そのワードが変更される可能性は大いにありそうに思える。そこで警視庁及び警察庁に、「闇バイト」という名称を「カジュアルではないか」と疑問視する意見があることについてどう思うか、また今後、名称を変更する可能性はあるのかを取材した。
まず、警視庁。警視庁生活安全部の公式Xでも、このように警告を発信している。
《「闇バイト」は犯罪!! SNSで#高額バイト#即日現金#簡単高収入など、甘い言葉で誘うアルバイト・仕事に注意! 犯罪実行犯の手先にされるかも? 一度でも手を出してしまうと、脅されて抜け出せません。気付いたら一人で悩まず、家族や友人、警察に相談してください》
また、警視庁がHPで公開している、「闇バイト防止啓発チラシ」チラシには≪#BAN闇バイト≫と大きくデザインされている。少しポップだという声も上がっているが……。
この「闇バイト」という言葉のカジュアルさに対して、警視庁広報担当者は、「『トクリュウ』(匿名・流動型犯罪グループ)もそうですが……」と、“短い言葉で語呂がいい”単語であることを一部認めつつも、「東京都だけで事件が発生しているわけではないので、警視庁の一存で名称変更の可能性に触れることはできない」と回答する。
では、全国の警察を統括する警察庁はどういうスタンスなのか。
警察庁広報室担当者は、“カジュアルではないか”という指摘について「複数の関係部署で意見交換をしたが、(警察庁としては)コメントできない」と話す。
その理由としては、「警察が元となって発信し始めた言葉ではないため、名称に関する意見を述べる立場にない」と説明。とはいえ、名称変更の例は前述のとおり過去にもあるわけだが、こちらについても「現時点では何もいえない」とのことだった。
現在も、闇バイトによる犯罪が連日のように横行している。