人生のイベントや子供の運動会、思い出のテレビ番組……人類が、増えすぎた記憶をビデオテープに保存させるようになって、既に半世紀。

 巨大なVHSテープは人類の第二の記憶のよりどころとなり、人々は子を産み、育て、録画し、そして死んでいった。

 西暦2019年。ユネスコと国際音・声アーカイブ視聴覚協会は、『マグネティック・テープ・アラート』を宣言。25年に地球圏のビデオテープが見られなくなると発表した。後に『VHS2025年問題』と呼ばれ、人々は自らのテープの山に恐怖させられた。

 コンシューマ映像機器、映像技術に詳しい、コラムニストの小寺信良氏はこう話す。

「ビデオの再生機器が急速に姿を消していて、25年頃に再生が難しくなる。長期的に再生するには、デジタル化してメディアに転送する必要があるという警鐘です」

 時間は容赦ない。さらに、もう一つの側面があるという。

「ビデオテープの寿命が約20年なんです。VHSテープに使われている永久磁石は、20年ほどで磁力が弱くなります。これによりデータが読み込めなくなってしまう可能性があります」(小寺氏=以下同)

 以上の二点が、今回の2025年問題を形成しているのだ。現在、ビデオテープ映像をDVDにダビングサービスしている店に駆け込む人が急増しているという。

 だが、「DVD化保存」には疑問が残ると、小寺氏は言う。

■映像保存とは二手三手先を考えて行うものだ

「実はDVDメディアの寿命は15年くらい。VHSよりも短いんです。さらにDVDプレーヤーも市場から徐々に姿を消していて、Blu-rayプレーヤーの売り上げも前年比で約8割も減少しています」

 8割減! 円盤メディアの滅亡も意外と近い! このままだとDVDも数年後にはVHSと同じ道をたどる。

「DVDブームは大体00年くらいから。すでに25年近くたっていて、初期のDVDメディアは読み込めなくなってくる可能性があります。『DVD2035年問題』もありえます。VHSと同じように、注意しないといけないと思います」

 人は涙するしかないのだろうか? 思い出の映像を残すためには、どうしたらいいのか?

 小寺氏は、オススメの方法を2つ教えてくれた。