■『おむすび』がこれまでの朝ドラと違うところ
だが、これは制作側の狙いかもしれない。本作は震災からの人々の《復興》が大きなテーマになっている。それを象徴するように、B’zによる主題歌『イルミネーション』の歌詞も、「まがりくねった道の先にキラキラした世界があるはず」という内容で、困難からの希望を歌っている。
では、そのテーマをヒロインの結が担っているかというと、そうではない。たとえば12月4日放送の48話で、恋人で社会人野球の投手・翔也(佐野勇斗/26)に「自分らしいピッチングを」とアドバイスしていたが、これは、結が翔也の復活(復興)を支える立場だということ。
また、結が目指している栄養士という職業も、人を支える仕事だ。つまり、『おむすび』はヒロインが成長するという、朝ドラ定番のフォーマットから外れた、ヒロインが誰かの復興を応援する(支える)作品なのだ。
ヒロインだけでななく、震災で傷ついた家族、商店街の人々などと、周りにいるの誰かの《復興》を描くため、話の進みが遅く感じるのも当然だ。これはヒロインの話ではなく、常に誰かの話だからだ。
これは朝ドラとしては挑戦的な作品といえる。残念なのは、それが視聴者に受け入れられなかったことだ。
しかし、6日放送の50話で歩が「結ってさ、名前の通りだよね。人と人とを結びつける」と笑顔で語ったように、結が周りの人々をつなげ、その心を復興させる物語として見れば、興味深く見えてくるはずだ。結の応援する姿を楽しみたい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。