■日本犬6種それぞれの強みとは

 猟犬として進化してきた日本犬だが、それぞれの種類によって性格と得意な獲物が異なるという。例えば、前出の“熊犬”なら“噛む”のではなく“吠える”ことが求められる。

「熊の頭骨は相当、分厚く、犬が真っ向勝負しても勝ち目はありません。1週間近く、クマの巣穴の周りで吠えて精神的に追い込む執念深さが必要になります。そこで多く活躍するのが、北海道犬や甲斐犬なんです」

 なお、動画に出た秋田犬は本来、“熊犬”には適さないという。

「秋田犬は“秋田マタギ犬”から改良されて生まれた、いわば観賞用の犬です。体は大きいですが、その分、動きが遅いですし、狩猟犬としての活躍は聞きませんね」

 また、イノシシやシカの狩猟には、噛んで動きを止められる性質を持つ種が好ましいという。

「山中を50キロものスピードで走るイノシシを見つけ出して追いかけないといけない。それだけの嗅覚とスピード感、また噛み付く強い闘争心が必要です。その点、紀州犬や四国犬がピッタリですね」

 ちなみに、ペットとして大人気の柴犬も、もともとは立派な猟犬だ。

「体重10キロ足らずの彼らは、小柄ながら持久力とスピードには太鼓判を押します。小回りもきくので、キツネやウサギ猟に活躍していました」

 猟犬としての戦闘力と、かわいらしさの両方を兼ね備えている日本犬。ペットとしても飼ってみたい、と考えるところだが、チワワなどの洋犬とは、その飼育にも違いがあるようだ。

「日本犬は狼に近く、犬としては原始的な存在です。忠誠心が強い反面、人見知りな性格が目立ちます。子犬の早い時期から親と離し、しつけをしっかりする必要があるでしょう。最近は“豆柴”も流行していますが、日本犬の性質が色濃く出ることもあるので、心構えが必要です」

 凛々しく吠える日本犬がいれば、熊も怖くない!?

パンク町田(ぱんくまちだ)
1968年、東京都生まれ。NPO法人生物行動進化研究センター理事長、動物研究家。近著に『パンク動物記 アフリカの最強動物』(ポプラ社)、『パンク町田の動物たちの嘘のような本当の話』(三笠書房)等がある。