■神シーンが連発する制作側のスタンス

 放送開始当初から、柳楽と坂東の演技に称賛の声が集まっていたが、終盤に入り、さらにその凄みが増している。本作はヒューマンサスペンスをうたっていたが、彼ら演者と脚本の力によって、良質なヒューマンドラマとして、圧倒的な高みにまでのぼりつめている。

 これは制作スタンスによるところが大きいようだ。脚本を担当している徳尾浩司氏と一戸慶乃氏はインタビューで「プロット(物語設定)があるにもかかわらず気持ちスタートで書く」と語っている。キャラの気持ちが設定やストーリーより優先されているからこそ、各キャラが生き生きと動き、演じる側も役に入りきれる。神シーンが連発するのも納得だ。

 昨今の地上波ドラマは、刺激的なプロットや謎解きで、視聴者を惹きつけるものが多く、人そのものを繊細に描くヒューマンドラマは流行らない傾向にある。その中で、評価、数字ともに高いものを得ている本作は、令和のドラマでは貴重な存在といえるだろう。

 最終回直前になり、リニア関連事業の関係者の失踪に、祥吾と樺島が関係していたなど、サスペンス部分の秘密はほぼ明かされており、残すは愛生とライオンの救出だろう。あとは、洸人と美路人を軸としたヒューマンな要素をじっくり楽しめそうで、小森兄弟とライオンがどんな結末を迎えるか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。