■松下洸平沼以上の魅力とは?

 これまで、児童や教師など周囲の人物がフィーチャーされていたが、今回は牧野(松下)メインの回だった。視聴者の指摘のように、ぶっきらぼうさの中にだんだんと“かわいさ”を見せてきて、今までにない松下洸平の魅力が楽しめた。ファンにはたまらない役どころだが、本作の魅力はそれとは別のところにありそうだ。

 それはひとことで言えば「誠実さ」だ。それは、X上の《昭和には絶対描けなかったドラマだな、繊細過ぎる。その繊細さこそ、今の時代に1番必要で、救われる子供、大人、たくさんいるだろう。このドラマが支持されるのは、ただ、泣かせようとか感動させようとか、そういう狙いは全くなく、確かにある事実を淡々と繊細に描いているからだと思う》という指摘にもあらわれている。

 今回も「場面緘黙」をテーマにするなら、もっとドラマチックに描く方法はいくらでもあっただろう。たとえば、真愛にイジメなどの困難を与える、症状の原因として特殊な家庭環境を用意するなどだ。だが、あえてそんな描き方はせず、クラスメートの児童も含め、まわりが的確にフォロー。真愛の気持ちを丁寧にくみ取り、解決に導いていた。

 これを普通に描いていたら、地味で退屈な話になっただろう。しかし、それぞれの切実さをしっかり表現しきった演者の力、そしてメッセージをしっかり伝えようとする制作側の誠実さで、しっかりドラマとして成り立たせていた。これが、松下洸平が発生させる沼以上に、多くの視聴者を引き付ける魅力だ。

 原作コミックは全17巻で、今回のエピソードは8、9巻掲載分。まだ描かれていないエピソードが多く残っているため、視聴者から続編を希望する声も出ている。昨今の民放地上波ドラマでは珍しい、誠実さを感じられる『放課後カルテ』をもっと見たい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。