■ハンバーグの落とし穴「ひき肉」でも…さわやかが「食中毒を起こさない」理由

 客にとって好みの焼き加減に仕上げられるのは嬉しいポイントではあるが、ハンバーグ調理の落とし穴は“ひき肉”を使っていることだ。厚生労働省のサイトでは、“ひき肉に付着している菌が中心部まで入ってしまう”ことに触れ、「多くの病原体は75度で1分間以上の加熱で死滅することから、中心部までしっかり火を通すことが重要」だと発信している。先の吉祥寺バーグでは、レアのままのハンバーグを提供し、客自身が鉄板の上でつぶして加熱するという提供方法をとっていた。“中心部を75度で1分以上加熱”という条件をクリアできていなかった客も少なからずいただろう。

 そんな生ハンバーグ人気の火付け役といえば、静岡のローカルチェーン『炭焼きレストランさわやか』の「げんこつハンバーグ」が知られる。今回の“生焼け騒動”を受けて

《なんでさわやかには(保健所の)指導が入らないの?》
《さわやかのハンバーグが食えなくなる日が来るね》

 といった声も寄せられているが……。品質管理の観点から県外には出店しないなど、徹底した“安全・安心”をうたう同社に、「なぜさわやかのハンバーグは大丈夫なのか」を改めて聞いてみた。

 同社広報・早川さんは、今回の騒動について「認識はしている」といい、「またか、という感じですよね」と話す。

 確かに、ハンバーグは“生焼け”や“食中毒”といった騒ぎが絶えない。前述で「飲めるハンバーグ」を取り上げたが、振り返れば2000年2月、「ハングリータイガー」で食中毒が発生した。アメリカから輸入していたパテにO157の菌が混入していたことが原因だった。

 さて、さわやかでは「産地からテーブル上までの安全・安心の物語」として、HP上にその詳細な管理方法を公開している。そこから肉の殺菌に関する部分だけをピックアップしてみても、まずハンバーグに使用する原料肉は、専用の殺菌機で表面殺菌。さらに製造したハンバーグ全品目について、一般生菌数や大腸菌の検査と、病原性微生物(O157)を迅速検出・菌種を特定するシステムとを併用し、安全性を確認しているという。

「食品安全に関する国際規格・ISO22000を取得するなど、国際的な安全の基準をクリアしています。定期的な検査も行なっていますし、日頃お店で調理する際も手で触らないなど、とにかく菌が入り込む隙をつくらないように衛生管理には注意しています」(早川さん)

 そのうえで、さわやかの各店舗は毎日開店前に焼成条件、鉄板加熱条件など、客への提供と同様に作ったものを試食し、問題がないことを確認する。

 ちなみに、さわやかのハンバーグも赤みがある状態でテーブルに運ばれるが、目の前で半分に割り、熱い鉄皿により中に火を通すのはスタッフの役目だ。騒動を受け、生ハンバーグ界隈の存続の危機を心配する声もあるが、早川さんは「今のところは変わらない」と、これまでどおりの営業を続ける姿勢を示す。

 年間500万食以上を提供する同チェーンで過去に食中毒が起こった例はなく、早川さんは「当然(食中毒の可能性があるということを)念頭に取り組んでおります」と言葉に力を込める。

 生ハンバーグ界で王者の風格を見せるさわやか。もちろん、リスクが完全にゼロとは言い切れないのもまた事実だろうが、少なくともその店がどういった衛生・品質管理をしているのか、消費者は知ったうえで足を運んだほうが良さそうだ。