■子役がうますぎた『海のはじまり』

 生方氏や、その生方氏が敬愛しているという、坂元裕二氏の脚本ファンならば、この手法は予期していたが、これまでの明るい雰囲気の“夏の月9ドラマらしさ” を期待しているライトユーザーには、なかなかつらかったのではないだろうか。

 また、娘の海役の泉谷星奈の演技が素晴らしかったことも、仇になっていたようだ。かわいい子役が出てくるので、もう少しホッコリするシーンがあると思っていたら予想外。泉谷の演技がうますぎて、海の発言やふるまいは、母・水季(古川)が憑依しているかのようで、何をしても水季が透けて見えてしまい、まるでホラー。癒やしにはならなかったのだ。

 ほかにも事態を悪いほうへすすめてしまう夏(目黒)の考えが足りない行動など、つらい要因はいろいろあっただろうが、前半の展開では、海の存在が大きかったのではないだろうか。

 とはいえ、生方氏の脚本がよく出来ていたからこそ、「つらい」の大合唱が起きていたのだろうし、その実力は今後の作品に発揮されるはず。どんなドラマを見せてくれるのか、期待して待ちたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。