近年、若者の間で薬物を過剰摂取するオーバードーズ(OD)が広まり社会問題化している。

 手に入りやすい市販薬などを過剰摂取することにより、気分が落ち着いたり高揚したりするという作用が得られることから一部の若者の間で流行。しかし、副作用による悪影響や依存症になる可能性があり、中には緊急搬送され死亡したケースも出ている。

 国立精神・神経医療研究センターの調査によれば、全国の精神科医療施設における薬物依存症の治療を受けた10代患者の「主たる薬物」の推移として、2016年は“市販薬使用”の割合が25.0%だったが、2022年には65.2%にまで増加している。

「乱用は、若年層へのSNSの普及と密接に関係していると言えます。SNS上には、どの市販薬をどのぐらい飲むとどういう状態になるといった具体的な経験談がたくさん出回っています。販売店舗の情報なども拡散されているため、ドラッグストアのなかには、過剰摂取の抑止として購入制限をかけるところもあります。ですが結局、何店舗か回ったり友人に依頼することで、簡単かつ大量に手に入れられることには変わりありません」(医療系メディアライター)

 厚労省が調査した「医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送人員」のデータを参照すると、ODにより救急搬送される若者は増加傾向にある。2020年、ODによって救急搬送された10代は1,018人、20代は2,728人だったのが、2022年にはそれぞれ1,494人、3,295人。他の世代は減少かほぼ変わらない数値なのに対し、10代・20代の伸び率は顕著だ。なお男女別ではいずれも女性が8割を占めている。

 そんな中、大手フリマサイト「メルカリ」では現在、市販薬の「空き箱やシート」が大量出品されていることが密かに話題になっているのだという。一体なぜ“空き箱”に値段が付くのか。

「たとえば、ある市販薬の空き箱は“16箱まとめ売り”で999円(送料込、以下同)。10粒で1枚になっている包装シートは24枚で600円という具合で売られており、どちらも売り切れの状態になっています。薬が抜かれた状態の空のシートが大量に出品されている状況はちょっと異様ですが、購入する人はこれをSNSにアップして“ODしてしまう程病んでいる”ことをフォロワーにアピールするために使うといいます」(裏社会事情に詳しいライター)

 事実、メルカリに出品されているそれらの商品の説明欄にはそれぞれ、《Twitterやインスタの病みアピなどにお使いください(?)》《Twitter(X)などに使ってください》(いずれも原文ママ)という説明文が付けられているのが確認できる。

「若者のSNSの使い方では“インスタ映え”に象徴される、“キラキラした私生活をアピールする”イメージがありますが、その裏で“病み”を吐露し続ける人たちもいます。リストカット、過食・拒食などが代表例で、ODもその一部。“これだけ飲んだ”という大量のシート写真や、服用の経過報告が多数ヒットします」(前同)

 ただ、空き箱活用となると、実際にはODをしていないということになる。なぜ、そこまでして“病み”をアピールする必要があるのか――。背景を、「ゆうメンタルクリニック」院長で精神科医のゆうきゆう氏に紐解いてもらった。