■若者に増えるOD、背景にある「自傷」と「依存」
まず、若者がODに手を出すまでには、どういった心理や環境が影響しているのかを聞くと、
「ODの原点は“自傷”です。リストカットなどと同様、自分自身をキズつける行為になります。そして、ある意味“依存”にも通じます」(ゆうき氏=以下同)
過剰摂取を続けると、薬物による身体ダメージ、また意識混濁で転倒してしまうことによる外傷、これらにより死に至ることもあり得る。それにも関わらず自傷行為に手を出してしまう“依存”状態とは――。
「自分に痛みや苦しみを与えることで、その痛みや苦しみをマヒさせるためにドーパミンという物質が出ます。こちらは快楽を感じさせる作用もあるため、“痛い”けど、“少しだけ気持ちいい”という状況になります。すると飲酒や喫煙などと同じく、ついつい何度もやってしまう。これが依存状態です」
さらにゆうき氏は、ODを報告する意図について「“周囲から心配される”というメリットもある」と指摘する。リアルな関係性はもとより、SNSに投稿すればネットの向こうにいる人たちからも心配してもらえる。“病みアピール”をすることにより、他者との繋がりを実感できる者もいるのだ。
ゆえに実際に服用していなくとも「病みアピール」ができるメルカリの“空き箱”にも需要が存在する。
「自傷には踏み切れず、“痛いのは怖い”“リスクは怖い”と思いつつも、“でも周囲から心配されたい”という部分のみを目的としているのではないでしょうか。“病むほど苦しい状況なのに、頑張っている自分”を印象づける形です。また現代社会において、“被害者”というのはとても強い立場だったりします。その立場を演じられる、という目的もあるのかもしれません」
新宿・歌舞伎町の一角で若者がたむろしている“トー横”界隈などでみられるODだが、SNS上にも病んだ若者たちが漂っていて……。
ゆうきゆう
精神科医・マンガ原作者。
ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックグループ総院長。
東京大学医学部卒業。医師業のかたわら心理学系サイトの運営、書籍執筆なども手がける。
シリーズ累計三〇〇万部を超える『マンガでわかる心療内科』(少年画報社)やJam氏との共著『マンガ版 ちょっとだけ・こっそり・素早く「言い返す」技術』(三笠書房)などマンガ原作、著書多数。
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