■松下洸平と伊藤健太郎も効果的に
また、平安時代は史料が少なく、推測を織り交ぜたオリジナルキャラも生み出せたことも良かった。散楽一座の座員で義賊・直秀(毎熊克哉/37)、宋の薬師・周明(松下洸平/37)、若武者・双寿丸(伊藤健太郎/27)などが、まひろや娘・賢子(南沙良/22)との恋模様をいろどり、物語を盛り上げた。
さらに、なによりの魅力は、平安時代というなじみのない時代を知る喜びがあったこと。大石氏は「脚本を書いた私も含め、楽しみながら、知らないことを知るという喜びが『光る君へ』にはあったのではないかと思います」と語っている。たとえば、朝廷での官位から儀式、外敵の侵攻である刀伊の入寇(といのにゅうこう)など、学校で学ぶ機会が少なく、知ることのなかったエピソードは新鮮だった。
思い返せば、23年放送『どうする家康』も「情けない家康」という新解釈を題材にし、22年放送『鎌倉殿の13人』も大河では比較的マイナーな、北条家の鎌倉幕府を描いていた。実は『光る君へ』は、最近の大河ドラマのど真ん中の魅力を、しっかり兼ね備えていたのだ。
そんな、新しくもあり王道だった『光る君へ』。配信での成功を受け、今後の大河ドラマにも、より挑戦的な作品が生まれるだろう。25年1月5日からスタートする、”江戸のメディア王”こと蔦屋重三郎の生涯を描く、横浜流星(28)主演の『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。