若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトに2025年のトレンドを大胆予測。今、若者の間でブームになっている音楽トレンドを深掘りする。
ラッツ&スター『め組のひと』、荻野目洋子『ダンシングヒーロー』、小泉今日子『学園天国』……2025年の令和の時代にあって今や昭和のポップスがTikTokで大バズり。「昔の歌」だと一瞬でスワイプされてしまうのかと思いきや、Z世代の心をがっちり掴み、“新しいエモ”を生み出しているといいます。
ちなみに、現在の「昭和ブーム」は音楽だけに限ったことではありません。2025年には『ベルサイユのばら』『グレンダイザーU』『キャッツ・アイ』などの昭和アニメのリメイクが放送予定。バラエティ番組では、昭和ソングの早押しクイズで高校生と芸人が対決。
また、1月10日には東京メトロが丸ノ内線開業70周年を記念として「昭和歌謡」をテーマにしたスタンプラリーを開催し、3月に予定されているイベントには昭和の「アイドル四天王」の一人、南野陽子がキャスティングされていることも話題となりました。
さらに、「昭和レトロカフェ」「昭和インテリア」が流行するなど、レトロブームは生活空間にも波及しています。
では、今なぜ昭和ポップスが流行っているのか、その理由を紐解いてみましょう。
昭和ポップスがTikTokで流行する一つの要因として、真っ先に考えられるのが「ノスタルジー」です。しかし、リアルタイム世代のそれとは違い、若者にとっては「過去との遭遇」による「新鮮さ」という意味合いに変わります。「わかっていないから知りたい」という気持ちが起点となり、80年代同様に「聖子推し」「明菜推し」などと盛り上がっているのだとか。
昭和歌謡は、現代の音楽とは異なる独特のメロディーで、歌詞も現代の音楽よりもストレートで感情表現が豊か。恋愛や友情、社会に対する思いなど、普遍的なテーマが共感を呼び起こし、若者たちの心に深く響いているのかもしれません。
また、親世代が若かりし頃に聴いていた音楽を子供たちも一緒に楽しむことで、世代間のコミュニケーションが円滑になるという側面もあります。親子で一緒に歌ったり、共通の話題にしている人も多いのではないでしょうか。
お隣の韓国でも、昨年4月に放送された「韓日歌王戦」が記録的な高視聴率を記録したことをきっかけに、昭和歌謡が注目を集め、チェッカーズ、尾崎豊、近藤真彦、テレサ・テンの名曲が韓国の若者たちの間で一大ブームを巻き起こしています。
ネット上で「昭和 TikTok」と検索すると、
《TikTokに歌ってみた動画を投稿しました!曲は中森明菜さんの『スローモーション』です》
《最近はTikTokで気になった曲を探して聞いてるよ。オールジャンルで昭和の曲とかのほうが好き》
《ウチの息子たちもたまに昭和歌謡を口ずさんでて『何で知ってるの?』と聞くとほとんどTikTokって答えます。 国や世代を超えて聴かれるのはいいことですよね》
《今は10代のほうがTikTokで昭和の曲を知っていて、30代くらいが一番昭和から遠いんじゃない?》
といったコメントが並んでいます。
昭和ポップスのリバイバルは単なる「懐古主義」ではなく、「新しい文化」として若者の中に根づきつつあり、この流行がどのような広がりを見せていくのか、これからも注目していきたいところです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。