■タイトルとキャラ設定が違っていれば…

 俳優陣の演技もさることながら、池田エライザ(28)主演のドラマ『舟を編む〜私、辞書つくります〜』(NHK)などを手掛けた、蛭田直美氏の脚本も秀逸。一平がたびたび口にしていた「利用する」を正助に背負わせ、新美南吉氏の名作童話『ごんぎつね』のエピソードをひまりと康太の境遇に重ねたりと、涙腺を刺激する感動的な神回となった。

 それほどの良作にもかかわらず、視聴率も配信も数字はジリ貧。これは、ドラマのタイトルの軽薄さと、しっかりした内容とのズレが原因。“最低”と言いながら、どうしてもそう思えない行動を繰り返す一平のキャラブレが大きく、特に序盤でそれが顕著だったため、早くに離れてしまった視聴者は多いはずだ。

 しかし、それらさえ除けば、ホームドラマとして非常によくできている本作。せめて一平を元・ニュース番組の敏腕プロデューサーではなく、ちょっとダメなおじさんくらいにしておけば、腹黒さを無理に演出する必要もなく、見るほうも違和感を抱かなかったのではないだろうか。

 今期で一番の、“見ないともったいない”ドラマと言える『日本一の最低男』。次回は一平と父・平蔵(柄本明/76)の関係が描かれるようだ。TVerなら最新の第6話が、FODやNetflixならこれまの全話が配信されており、今からでも間に合うので、ぜひ見てほしい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。