■元キー局Pが解説するデヴィ夫人が出演できなくなる理由

 前出の制作会社関係者は続ける。

「デヴィ夫人の最近の主な看板企画は『デヴィ・出川の諸国漫遊記』、そこに出川ガールも同行する『出川女子会』の2つ。20年近くの仲である出川さんとの名コンビぶり、“小娘”と呼ぶ出川ガールに嫌味を言ったり言い返されたりする姿など、とにかく大人気で、夫人の出演回は基本的に高視聴率なんですよね」

 すでに視聴者の間でもデヴィ夫人の政界進出は話題。

《デヴィ夫人のイッテQどうなるの?降板確定なの?出川哲朗とのコンビ好きだったのに残念すぎる》
《僕も好きだった「出川女子会」はどうなるでしょうか?》

 といった、『イッテQ』への出演がなくなるのでは、と懸念する声が寄せられている。

 なぜ、政党の立ち上げを表明しているタレントはテレビ番組に出せないのか――小サイトは報道、情報番組を長らく担当してきた元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏に実情を聞いた。

「まず基本的に、政治に関係している人をテレビ番組に出すというのは、放送法による“縛り”があります。根本的なところとして、テレビは公平・中立でなければいけない、と放送法で定められているんですよね」(鎮目氏)

 放送法第四条第一項においては、放送事業者は放送番組の編集に当たって「政治的に公平であること」を確保しなければならないと定められている。

「特に選挙期間中は厳しく扱われますが、政治にかかわる人をテレビに出演させる場合は、各党から公平に出す必要があるんです。

 そして、デヴィ夫人が政治団体の代表になるとすれば、明らかに“党の代表”として扱われますから、他の党から“あの局はデヴィ夫人の『12平和党』をえこひいきしている”、というクレームが入ってしまう可能性があります」(前同)

 デヴィ夫人は以前から『イッテQ』の準レギュラー的な立ち位置であり、番組内容も政治色は薄いが、それでも「難しい」と鎮目氏は言う。

「バラエティ番組に出ている人は、それだけで親近感が湧いたり、視聴者が好感を持つことが多い。そうなると、そのタレントが所属する政党にも有利に働きかねないですよね。

 今後、デヴィ夫人を『イッテQ』に出演させてしまうと、日テレが『12平和党』およびデヴィ夫人に肩入れするような構図になってしまい、そういうクレームが来ても反論できない。

 そのため、一見すると政治とは関係ない『イッテQ』のようなバラエティ番組でも出演させることはできないですし、ましてやレギュラー的に出演するというのは、とても無理ということになるでしょう」

 一部では今春に予定されていた『イッテQ』ロケが白紙になるかも、とも報じられているデヴィ夫人。このまま、視聴者に大人気の看板企画も封印となってしまうのか……。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)