■『アンサンブル』はタイパ重視作品か

 その中には、《「細部の過程を大胆に省いて萌えシチュエーションだけを効率よく詰め込む」というこのドラマの作り方って、もしかして映画やドラマを倍速飛ばし視聴するタイパ重視層を意識しての新しい取り組み、だったりする?主人公の信条も「コスパ、タイパ重視」だしさ…》と、そもそも画期的なタイパ重視作品なのではとツッコむ声まで。

 かなりうがった見方ではあるが、あながち間違ってはいないのかも。あえてキュンだけを重視し、そこに至る細かい過程の描写を省いたら、本作のような「意味不明」とも言われてしまうドラマになったというところだろうか。

 それでも、見逃し配信・TVerでは、お気に入り登録数が87.5万(20日午前11時現在)で、今期連ドラのランキング8位と好位置。視聴率もアップして5%台に戻せそうな勢いを見せている。これは「このドラマはどこまでやるのか?」という、視聴者の怖いもの見たさ心理もあるのだろう。

 また、各シーンを切り取れば、演者はそれぞれ頑張っている。その演技力で、一瞬、トンチキな内容など忘れてしまうほどで、川口と松村、田中の俳優としての能力の高さを実感できる。ツッコみながらもつい見てしまうのは、この2つにあるのではないだろうか。

 いろいろな意味で『アンサンブル』から目が離せなくなってきた。第6話は、瀬奈が真戸原との交際を正式にスタートさせるが、瀬奈は交際していることを法律事務所のみんなには秘密にしておきたいと言う。事務所の面々にはすでに恋心はバレているはずなのだが、瀬奈にはなにか考えがあるのだろう。これまで以上のカオスぶりを期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。