■やっと全容が見えてきた『秘密』
漫画作品のドラマ化に際しては、原作ファンから辛口の意見が上がることが多いが、本作は、《とにかく原作リスペクトで、原作の人物関係性や事件詳細の大事なところをうまく詰め込み、いろんな都合での変更点は改悪とは感じない。演者の魅力も演出に最大限利用。でも魅力だけで演じずちゃんと人物作っている》などと、絶賛の声が多い。
これなら原作ファン以外に、多くの視聴者にも支持されそうなものだが、本作は残念ながら苦戦している。理由としては、毎回、残虐な殺人事件が取り上げられる、その内容が重すぎることがあるだろう。原作がそうなのだから、仕方ないことなのだが、民放地上波GP帯のドラマとしては、やはり重すぎる。
また、原作漫画をドラマサイズに合わせるため、エピソードが省略されていることが多く、漫画を読んでいる人以外には、わかりにくいことも苦戦の理由だろう。原作の世界観をイジってしまうドラマ化に比べれば、忠実な姿勢ではあるのだが、X上で、《4話でやっとこのドラマの世界が理解出来て面白くなった》という声があがっているように、すぐに入り込めなかった人は多いようだ。スタートダッシュが決まらなかったのだ。
重い内容ではあるが、監察医・雪子(門脇)の登場で、少し緩急がつくようになったし、物語の世界観もはっきり見えてきて、今後はより深く楽しめそうだ。だが、もう少しそれらが早ければ……。作品自体はサスペンスとしてもレベルが高く良作なのだが、やはり、この原作漫画はドラマ化には向いていなかったのかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。