■プルートは犬界随一の嗅覚の持ち主

『名犬ラッシー』で飼い主の少年の元に帰ろうと健気な姿を見せたラッシーはラフコリーという大型犬。

「もとは牧羊犬ですが、日本の警察で指定犬種となるほど訓練性が高く知能も高い犬種。日本では、少し小型で学習能力がより高いボーダーコリーや、より小型化した見た目のシェットランド・シープドッグのほうが人気ですが、ラフコリーはおとなしい性格でおすすめです」

 ディズニーシリーズでおなじみのプルート。彼の犬種はブラッドハウンドだ。

「犬界随一の嗅覚の鋭さで、アメリカでは追跡犬として活躍しています。特徴的なのが顔の“タプタプ”なのですが、この皮膚のたるみが嗅覚と密接な関係があると研究で証明されているそうです」

■見た目かわいいあの子が実は闘犬!

日本ではあまり知られていない『フランダースの犬』のパトラッシュの犬種『ブービエ・デ・フランダース』。※画像はpixabayより

『SPY×FAMILY』に登場する心優しい超能力犬・ボンド。具体的な犬種の言及はないが、その描かれている外見はグレートピレニーズに近い。この犬、姿は荒々しいマウンテンドッグの一種。

「もとは羊や飼い主の財産を守るための犬。30年ほど前までは、本能からかみつきやすい個体も多かった印象ですが、家庭犬として交配が進み、今では口数の少ない穏やかな性格になりました。氷点下くらいの気温が大好きな犬なので、日本の夏場は冷房必須でしょう」

『ジョジョの奇妙な冒険』で人間以上の活躍を見せたイギーはボストンテリア。その見た目はフレンチブルドッグにも似てかわいらしい小型犬だが、出身は闘犬というから驚きだ。

「闘犬としてアメリカンピットブルテリア(ピットブル)との抗争に負けてペット化したのが発祥なんです。とはいえ、実情は扱いやすく飼いやすい子がほとんどですよ」

『フランダースの犬』にて少年ネロを最期まで支え続けたパトラッシュ。こちらのモデルは日本ではほとんどお目にかかれないブービエ・デ・フランダースという犬種だ。

「僕も一度だけトリミングしたことがあるのですが、特徴的な巻き毛はとかすだけで一苦労。でも穏やかで知性も高く、聞き分けのいいかわいらしい子だった記憶があります」

 そのほかにも『クレヨンしんちゃん』のシロは雑種犬、『バットマン』のエース(バットハウンド)はジャーマンシェパード、『それいけ!アンパンマン』のチーズは「めいけん」という架空の犬種なんだそう。『忍者ハットリくん』の忍犬・獅子丸はチャウチャウ説があるが、特定の犬種をモデルにしたわけではないようだ。

『スター・ウォーズ』シリーズでおなじみのチューバッカも、実は犬がモデルだったという。

「見た目からブリュッセルグリフォンという犬種かと思われがちですが、ジョージ・ルーカス監督の飼い犬アラスカン・マラミュートのインディアナくんからインスピレーションを受けたそうです。執筆しているときにも、ドライブを楽しむときにもずっと隣にいた彼の姿からチューバッカを思いついたそうですよ」(前出のエンタメ誌ライター)

 人生の友であり、インスピレーションや元気の源泉ともなる犬との生活。飼い主さんは、 “うちのこ”をめいっぱいかわいがってあげてほしい。

パンク町田(ぱんくまちだ)
1968年8月10日生まれ。東京都出身。動物研究家。NPO法人生物行動進化研究センター理事長。最も好きな動物は犬。ムツゴロウさんこと畑正憲(はたまさのり)から「犬のことをもっと勉強しなさい」という言葉を励みにしている。犬の訓練士でもあり、愛玩犬のしつけ、猟犬、バンドッグ(護衛犬)、闘犬の訓練も行う。父が中華料理店を経営していた影響で当初は料理人を目指していたが、動物に関わる仕事を諦めきれずトリマーの専門学校に進学した。ペットショップ勤務ののち21歳で独立、爬虫類のバイヤーなどを務めた。1992年から動物の専門誌などで執筆活動を始めた。人気著書多数。