■ロケなしは中居正広問題の影響か
緊急救助のエピソードとして、土砂崩れのような大ネタを、災害現場を見せることなく成り立たせた演出は見事だった。フジテレビは中居正広氏(52)の女性問題に端を発した騒動の余波で、制作現場に困難が生じているといわれている。1月18日放送の『情報7days ニュースキャスター』(TBS系)では、脚本家・演出家の三谷幸喜(63)が「ロケ地を断られたりとかってすごく難しい状況に今なってる」と発言していた。
今回もその影響があったのだろうか。土砂崩れなどの災害現場はほぼ映らず、通報の声と司令官室だけで物語が進んだ。
しかし、それでもドラマがダレることはなく、これまで以上に緊迫感のある展開となったのは、演出はもちろん、演者の力も大きい。主役の粕原(清野)以外の司令課3係のメンバーも、それぞれの役の背景をつかんだうえで演じているので、説得力があってドラマに没入できる。特に今回は、妻と息子が災害の被害にあっていると知りながら、別の通報者を責任を持って助けた兼下役の、瀬戸の演技が光った。
本作のような冬ドラマだけでなく、春ドラマ以降も、フジテレビのドラマはロケ受難が続くかもしれない。しかし、ロケができなくても、感動的なドラマは十分に作れる。それを証明した『119 エマージェンシーコール』は、フジテレビにとって救世主と言えるだろう。
ここまで(第9話)で、本作の全話平均視聴率は7.4%。同枠で昨年7月期の話題作『海のはじまり』は全話で7.6%だったので、残り2話となった最終盤で抜く可能性は十分にあるだろう。第10話は空き家を狙った連続放火の犯人を、粕原と兼下が探る展開のようだが、今後の視聴率の数字の伸びにも注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。