■ドラマの格を上げた上白石萌音

 そして、もはや演技力には疑う余地がない、『法廷のドラゴン』(テレビ東京系)で主演した上白石萌音(27)。このドラマは、元プロ棋士志望の弁護士・天童竜美(上白石)が、法律事務所の所長・歩田虎太郎(高杉真宙/28)とバディを組む、将棋×痛快リーガルドラマ。シンプルな構成だったが、だからこそ、その実力が発揮された。

 上白石演じる竜美は、女性初のプロ棋士誕生を期待されながらも、弁護士に転向。挙動不審で空気を読まず、事務所内で突如、将棋の大盤を使って裁判の作戦を解説するなど、事件を将棋になぞらえて解決する。裁判での勝負服は、真っ赤な着物と袴の和装だ。

 そんな変わり者の弁護士という役どころを、違和感なく自然に演じ、チャーミングさまで感じさせるのは、ただごとではない。コミカルな演技もシリアスな演技もまさに自由自在で、上白石がドラマの格を確実に上げていた。今年は映画『夜明けのすべて』で、日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞するなど、いま最も脂の乗っている20代女性俳優だ。『法廷のドラゴン』は、同枠ドラマの歴代最高視聴率を記録したが、上白石の力が大きいのは間違いのないところだろう。

 春ドラマも、小泉今日子(59)と中井貴一(63)がW主演で、11年ぶりの続編となる『続・続・最後から二番目の恋』や、Travis Japan・松田元太(25)が地上波ドラマ単独初主演する『人事の人見』(ともにフジテレビ系)など、話題作がそろっている。それぞれのドラマで、俳優たちがどんな演技を見せてくれるか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。