■意外な駅構内の楽しみ方とは

150円で周るため、道中、駅から出られないわけだが、意外にも観光が楽しめる。満開の桜と競い合って咲く“千葉県の県花”菜の花に感嘆してもよし。太平洋の雄大な白波と、東京湾の穏やかな波の違いに驚いてもよし。大坪山の上にそびえる“東京湾観音”など、目を凝らすと遠くのほうに観光地もチラホラ見えている。

車窓から見える桜の木(撮影/編集部)
押し寄せる荒波とあいにくの曇天(撮影/編集部)

 駅に置かれた“名所案内”も必見だ。国鉄時代に設置されたという名所案内は、見ているだけでもノスタルジックだが、スマホで検索するとさらに往時に想いを馳せられる。

 例えば、外房線の途中にある行川アイランド駅。一見無人で周りには廃墟と化した建物と閉じられたトンネルが見え隠れする駅だが、名所案内には『行川アイランド』という文字。どうやら、バブル期には水族館『鴨川シーワールド』と張り合えるほどのリゾート地だったという。

 昭和30年には飼育されていたキョンが脱走し、今では房総半島で大繁殖を遂げて生態系を脅かしているというから、驚きだ。

 他にも、土地ごとの逸話などが分かって面白い時間を過ごすことができた。

 さらに、こんな思わぬ利点もあった。通り過ぎていく景色にリフレッシュできたのか、ため込んでいた仕事を車内でパソコンを開いて進めると、心なしかはかどったのだ。カフェで時間を過ごすよりもはるかに安上がりで、読みたかった本も読み終えることができた。