■米ディズニーではYOASOBIや緑黄色社会の曲が流れたことも

『クラブディズニー・スーパーダンシン・マニア』とは、2000年に開催されたスペシャルイベント。当時大流行していた『Night Of Fire』などディズニーとは別ジャンルの曲をシンデレラ城前のステージで流し、ディズニーキャラクターがジュリ扇(※かつてディスコ『ジュリアナ東京』で使われていた扇子)を持ってパラパラを踊るシーンも加わるという、今なお語り継がれる伝説のイベントである。

「大成功したイベントでしたけど、当初は“ディズニーでこんなことするなんて!”と否定的な声が多かったのも事実です。どうも外部の要素が入るイベントは荒れる気がします。

 おそらくですけど、運営サイドとしては、既存のディズニーリゾート好きな人とは別の層に来てもらいたい狙いがあると思うんです。

 たとえば、あり得ない話ですが“プロ野球のマスコットキャラクターに1シーズンだけミッキーマウスが就任!”とかなったら、普段は野球をあまり見ないディズニーファンも球場に足を運びますよね。これはあくまでも極端な例としての話ですが、そういうふうに東京ディズニーリゾートにも新しい風を入れて楽しんでもらうために、アーティストを呼んでいるんだと思います。

 より間口が広がるし、楽しみも共有できるし。逆にアーティストを知らなかった人が興味を持つこともあるし、私は良いことだと思います。

 一部のファンの方々の“世界観が崩れる”という言葉も分からなくはないんですけど、海外のディズニーのパークでは、何年も前から有名なアーティストとコラボしているし、それこそ海外の『ベイマックス』のエリアでは、YOASOBIさんや緑黄色社会さんなど曲が流れています」

 米・カリフォルニア・アドベンチャーパーク(カリフォルニア・ディズニーランドリゾート)では、『ベイマックス』の舞台がモチーフのエリア『サンフランソウキョウ・スクエア』内で、上記のYOASOBIや緑黄色社会のほかPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅ米津玄師など、多くの日本人アーティストの曲が流れている。

 本家ではそういった動きもあるなかで、なぜ日本では受け入れられていないのか――吉田さんは「ディズニーリゾートのBGMが“聞き慣れたディズニーミュージックのみで定着している”からと思うんです」と言い、こう続ける。

「25年前に『クラブ・ディズニー・スーパーダンシン・マニア』でミッキーマウスパラパラを実施した時も、普段はあまり東京ディズニーランドに足を運ばないような、ディズニーファンと違う層の子が沢山来たんですよ。そこでも“ミニーちゃんやデイジーにジュリ扇を振らせるなんて違和感しかない”と憤っていたファンが多くいました」

 最初こそ否定的な声が多かった“ディズニー×パラパラ”だったが、いざ始まるとディズニーランドファンもジュリ扇も買って一緒に踊るなど、大盛況だったという。

「最後には受け入れられていたんです。だから、今回のミセスさんの件も始まる前に否定的な声が多かったとしても、いざ始まったらみんな楽しめるのではないでしょうか。経験者は語る、ではないですけど(笑)。

 批判している人は関心があるわけですから、きっといの一番に足を運ばれるかもしれません。それで“思ったより楽しいね”となれば素敵ですよね。一流のアーティストが、わざわざコラボするんですから、クオリティも相当高いはずです」