■ベタだから求められている『めおと日和』
芳根はさすがに純情演技が板についているし、本田も少しかたいところがあるが、それがぎこちなさを強調して良かった。バイプレイヤーの経験は豊富な2人、甘味処を営む瀧昌の幼なじみ・坂井嘉治役の戸塚純貴(32)と海軍の同僚・深見龍之介役の小関裕太(29)も、絶妙な息の合わせ方。今後も芳根と本田を盛り上げてくれそうだ。
ドラマの内容を見るとたいして大きな事件も起きず、舞台は新婚家庭が中心で、場面転換はほとんどなかった。単調な内容になりそうだが、だからこそ2人のじれったい関係性を堪能できた。ここまでムズキュンに振り切ったのは、ある意味で潔い作りだと言えるだろう。
昨今の恋愛ドラマはミステリーや複雑な人間関係を絡ませたりと、ストレートにキュンを楽しめるものは、ほぼ絶滅状態になっている。深夜帯にわずかに残っているものの、主流は夫への復讐系で、今期も不倫夫、モラハラ夫、束縛夫に妻たちが復讐する『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京系)が好調だ。
一方で、キュンを楽しみたい人たちは確実にいるようで、《あまりにも良すぎるドラマかもしれない。恋模様がピュアすぎて、もどかしくなるし今後を見守りたい》《不倫とか復讐とかモラハラとか子宮とか、そういう内容にはうんざりしてたから久々にピュアなの待ってた》などと、本作を歓迎する声は多い。
昭和初期が舞台とあって、本作では、昨今いろいろ取り沙汰されるモラルを気にする必要はない。舞台もセットがほとんどで、ロケをしないで済むから、制作費も安く済む。そんな作る側にも都合がいい時代のラブロマンスは、これから流行るかもしれない。その点でも『めおと日和』に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。