■“ありえない”独占スクープを潰す行動

『キャスター』の第3話は、新種の万能細胞が発見されるも、論文に捏造の可能性が指摘されて――という話。捏造の主犯格である小野寺教授(花總まり/52)が大勢の記者から直撃取材を受けている場面で、本橋(道枝)は捏造に加担していた友人・栗林准教授(井之脇海/29)から託された証拠を叩きつけて真相を問いただす、という流れだった。

「独占的に得た“証拠”を、他社の取材陣が大勢いる中で晒す。そんな独占スクープを潰すような行為をする報道マンはいません。あんなことしたら、他社と横並びの報道になってしまいますよね。独占で情報を得たら水面下でさらに裏取りを進めて、そのうえで他社の人間がいない状況で対象者に当てるのが普通。AD・本橋みたいなことをしたら上司から大目玉を食らいますよ。

 3話まで見てきて強く感じますが、ドラマ『キャスター』はとにかくエンタメ性を重視していますよね。面白く見てもらうのが一番、そのためにはリアリティは薄くても構わない……と振り切ってつくっているのでしょうが、見ていて“さすがに……”と思えてきてしまいます。そこは、スキャンダル報道があった永野さんよりも気になる点ですね」(前出の民放キー局関係者)

 連続ドラマ『キャスター』について、長年の日曜劇場ウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「第2話は大谷翔平選手と元通訳の水原一平氏を思わせる内容、第3話はSTAP細胞をモデルにしたと感じさせるもの――リアルな出来事を脚色してドラマ化する場合、モデルとなった人物や企業を傷つけるわけにはいかないため、どうしても切り込みが甘くなり、結果としてリアリティにも欠けてしまいます。

 視聴者にとってイメージしやすい内容を目指したのだと思われますが、それ自体がそもそも悪手だったのではと。型破りなキャスターの阿部さん、年齢や経験が不足しているにもかかわらず総合演出を任される永野さん、学歴は優秀そうなのに言動がトンチキなADの道枝さんと、キャラクター設定自体に現実味が乏しい気も……。いっそ大胆なオリジナル展開に振り切った方が、素直にエンタメとして楽しめたかもしれません」

“リアル感ゼロ”という厳しい声もある日曜劇場『キャスター』。エンタメとリアリティのバランスは難しいところだろうが……緒川たまき(54)、手塚とおる(62)など演技派俳優が続々登場してくる今後に期待したい。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。