■現実と劇中の役割が違いすぎる
『キャスター』の劇中で華(永野)は進藤(阿部)の取材に同行してカメラを回すなど、局外で仕事をしている描写が多いが、そういった仕事は総合演出の担当ではないという。
「デスクで番組の方針を決めたり、番組内容を演出するというのが、本来の総合演出の仕事です。
役職の不自然さの話だと、宮澤エマさん(36)が演じている編集長・市之瀬咲子もそうですね。インカムをつけていますが、編集長が放送中に誰かに指示を出すのは違和感がありますね。編集長は扱うニュースの大方針を決める役割なので、細かい指示を出している余裕はない。
また、音尾琢真さん(49)がチームが円滑に回るようにまとめるチーフプロデューサー・山井和之役で出演していますが、テレビ番組においてプロデューサーの主な仕事はお金、予算管理です。3話まではそうしたシーンはなく、視聴者からなんの仕事か分からない、という声が上がるのは当然でしょうね」(前出の民放キー局関係者)
さらに『キャスター』には、現実と比べて非常に不自然なことがあるという。
「報道番組『ニュースゲート』をつくっているなかで、“記者”が出てこないんですよね。本来であれば、テレビの報道局にはそれぞれ専門分野を持つ記者がいて、彼らが取材を行なったうえで、その取材データ、映像素材を番組に渡すことで、報道番組ができていくんです。
しかし、『キャスター』の場合はなにわ男子・道枝駿佑さん(22)演じるAD・本橋悠介とか、総合演出の華が現地に赴いて取材をしている。現実でもADが取材をすることはありますが、それにしても記者が一人も登場しないのはあり得ないです」(前同)
現実の報道番組では、記者と番組サイドのせめぎ合いがあり、取材してきたものをどこまで番組で出すかなどの駆け引きもあるという。
ちなみに、『キャスター』と同じく報道番組が舞台だが、リアリティ重視の作風だった長澤まさみ(37)主演の『エルピス-希望、あるいは災い-』(22年10月期)の場合、冤罪死刑囚の無実を晴らす報道をする代わりに、さらなる巨悪を見逃すことを約束する取引などが描かれた。
『キャスター』はそういったベースの部分に加えて、第2話では“内閣官房長官が会見室を使わずにぶら下がり会見をする”“外部から番組に直接、クレーム電話が殺到する”など報道番組を制作する人からするとありえない描写が見受けられたというが、第3話でも「さらにおかしな場面が」(同)あるという。
「第3話は、道枝さん演じるAD・本橋の主役回で、彼が疑惑の渦中にいる大学教授に不正の証拠を突きつける場面がありましたよね。あれは現実では絶対にありえません」(同)