■「どの作品でもいつも、役に向けて普段とちがうことをしようとは思っています」

撮影/冨田望

――オーディションなど大事なことがある前はお墓参りに行くんですか?

平野 年に何度かしか行きませんが、オーディション前日に父から電話が来て、急になんだろうと思ったら「明日、おじいちゃんの命日だからお墓参り行っておけよ」とだけ言われて、「おお、わかった」と。それで行きました。いつもなら面倒くさいという感情も湧きそうですが、このときはそんなことは全く思わず行きました。

――ドラマ『被写界深度』の紺野はカメラ好きで、後にカメラの道に進むことになるという役柄ですが、平野さん、さきほど今日のカメラマンとカメラの話をしていましたよね。勉強されたんですね。

平野 はい。撮影に入る前、普段フィルムカメラを使っている方からご指導いただき、フィルムの巻き方とか初歩的なことを教えてもらいつつ、自分でも初心者向けカメラ入門みたいな本を買って読みました。もう初歩中の初歩の知識ですが、お守りというか、困ったときになにか役立つかなと思って準備はしています。どの作品でもいつも、役に向けて普段とちがうことをしようとは思っていますね。

――いままではどんなことをしてきましたか?

平野 『ウルトラマンZ』(テレビ東京系、2020年に放送)の役柄は空手家だったので、ジムに行って体を鍛えるとか、そんなレベルですが、やっておけば苦しくなったときに「これをやっているから自分は大丈夫だ」と思えるかな、と思って。準備しないと不安になっちゃうというのもあります。

――心配性な一面があるのですね。今作は原作ではキスシーンもありますが、そのあたりの心配はありましたか?

平野 川崎僚監督が、僕と早川役の宇佐卓真くんをすごく美しく見えるように、現場のあらゆるスタッフさんたちと試行錯誤してくださり、「目線の位置をもう少し上に向けて」とかお芝居ではあまり言われたことのない指示を受けました。僕たちが美しく見えるように徹底的にやってくださっているんだなと思いました。そんなふうにキスシーンもすべてお任せしていました。

――画作りが徹底されているドラマなんですね!

平野 僕自身は、宇佐くん演じる早川に「正面から向き合おう」という気持ちしかなかったです。宇佐くん、普段の現場でもずっと早川なんですよ。台本を読んでいる姿とか監督に相談している姿とかいろんな姿を見ていたら、紺野と同じように愛しさが増していったことをすごく覚えています。

――宇佐さんのどんなところにキュンとしましたか?

平野 苦しんで悩んでいる姿が動物というか、ワンちゃんみたいで愛おしかったですね。

――そんなふたりに、世界中のファンがキュンキュンするでしょうね。ところで紺野はカメラを愛する高校生ですが、平野さん自身は学生時代に熱中していたことはありましたか?

平野 小学生の頃はプロ野球選手になるのが夢で、卒業式に「プロ野球選手になってお母さんに家を買います」みたいなことを言う“野球バカ”だったんですが、中学生になっても身長があまり伸びず、周りとのパワー差を感じて挫折して、中3直前に野球をやめたんです。

 野球のために早起きして、朝6時集合とかで他県へ遠征に行くんですけど、小学生の頃はそれが楽しかったのに、いつの間にかだるそうに起きるようになって。そんな僕を見て母が、「野球、楽しい? 辛かったらやめていいよ」と言って、その瞬間、涙が止まらなくなっちゃって。「俺、野球嫌いになってるのかも」と思って、そこでやめるという選択をしました。あのときはすごく悔しかったですね。