■岸優太の日常が顔を出すシーン

 天とのことが解決したことで、仕事に意欲的な炬太郎がとてもいい。社長とエリーの打合せに同席するなど、順調な仕事ぶりを見せる炬太郎。その打合せの後にまさかの事態が起こる。娘の誕生日だからと早々に退社する社長に、エリーは立っていられないぐらいに動揺したのだ。

 それは、自分も同じ時期に子どもを持つことを見送っていたからだった。そう、エリーは結婚していたのだ。そして、すでに離婚をしていた。夫は子どもを希望していたが、仕事を優先したエリーは適当な相槌だけ打って誤魔化していたというのが、なんとも切ない。

 こんなときは、誰かに話しを聞いてほしい。つらかった思いを聞いてくれて、お酒を一緒に飲んでくれる人がいるって、実はうれしいものだ。エリーは紙コップでお酒を飲むから、興奮してお酒をこぼしたり、手で潰してしまったりしないか、炬太郎はヒヤヒヤする。炬太郎が、エリーを心配しながらも手元の紙コップを気にしているのが、なんとも岸らしく感じられた。

 ろれつの回らないエリーが突然立ち上がった時には、フラついて転ばないよう心配したのか、紙コップからお酒がこぼれたのかを気にして、チラチラと足元を見ているのも気が利いた芝居だ。ト書きに描いてあるのか、演出なのか、アドリブなのかは分からない。だけど、こういうちょっとしたところに、岸の日常的な部分がチラリと顔を出すのがたまらないのだ。