■害虫駆除業者「怖いのは大量の死骸」
早川氏によれば、この「ユスリカ」は、成虫寿命が1~2日程度という“弱い虫”。つまり「羽化して成虫になってしまったら、放っておいてもすぐに死ぬ。その間にも次から次へと飛んでくる」ため、殺虫に躍起になっても仕方ないというのだ。
「ユスリカは水中に産みつけられた卵から孵化して、水の中で成長し、羽化して成虫になります。駆除をするなら、水源を断つか、幼虫からかえらせないための昆虫成長抑制剤をまくしかない。万博会場のような広い場所で羽化してしまったものは、殺虫剤や誘引剤で集めて殺すしかありませんが、それをするにはあまりにも広大で、非現実的では。費用も想像を絶する規模になると思います」(早川氏=以下同)
ちなみに、「ユスリカ」が集まりやすいのは、光の元や壁、柱といった場所。成虫の間に交尾をするため、“蚊柱”となる生態がある。
「蚊柱をつくっているのはオスです。何百匹も集まれば羽音で目立ち、ここにオスがいるよとメスを呼び込むことができ、そこで交尾をし、産卵するのです。いま“蚊柱”があるところは、会期中にも産卵、孵化が繰り返される可能性があるということになります。つまり一度駆除して終わりということにはならない」
刺したり血を吸ったりといったことはしないものの、人間にとって害がないとは言いきれない。それがユスリカの「死骸」である。
「死骸を掃除することが大事になるでしょうね。死骸やその粉末を吸ったりしてしまうと、アレルギー性の鼻炎や喘息などの症状を引き起こす可能性はあります」
ちなみに、大量発生したユスリカはコウモリの好物だという指摘もあるが、ユスリカ研究を続けている山本直博士は、自身のXで、
《霞ヶ浦や琵琶湖ではずっと昔から大量発生しています。 感染症の報告はほぼなく、コウモリもそう簡単には定着・繁殖しません》
と、ユスリカの大量発生は自然界では珍しいことではなく、またそれを捕食するコウモリが万博会場を“すみか”にすることもないのではという見解を示している。
東京ドーム約33個分といわれる万博会場で、ユスリカの目撃報告の多い「ウォータープラザ」エリアはおよそ東京ドーム10個分。22日には、府と包括連携協定を結んでいるアース製薬が、駆除対策として殺虫スプレーなどを提供するとともに、現地調査に乗り出すことを明かしているが、どのような決着がつけられるのか。