■松田元太は苦境のフジドラマを救えるか

 これまでは、ラップバトルで問題解決するような、荒唐無稽な展開が見られた本作。松田の演技も、体を張った飛び道具的なものが多かったが、今回は真っ当にぶつかりあっていて、その演技が良かった。もちろん、まだ未熟なところはあるが、松田がシリアスな演技もできるということを証明した意義は大きい。

 本作の主演抜てきには、『ドッキリGP』のSnow Man・向井康二(30)ふんするヒーロー「マッサマン」の記憶ゲーム企画に、お助けヒーロー「マツダマン」として登場して人気だった松田を、さらに押し上げたいという意図が、所属事務所・STARTO ENTERTAINMENTと、フジテレビの双方にあったのは明白だ。

 フジテレビは、中居正広氏(52)の女性問題に端を発したスポンサー離れで、ドラマ制作費の大幅な削減があったと聞く。それは、同局で放送中の松本若菜(41)主演の『Dr.アシュラ』のセットや、芳根京子(28)主演の『波うららかに、めおと日和』のCGの安っぽさを見れば、ほぼ事実だと思われる。今後はひたすら手術をしまくる『Dr.アシュラ』や、ムズキュンに徹底した『めおと日和』のような、予算は少なくともアイデアで勝負するドラマが増えるだろう。

 そんな苦労の中、バラエティで人気のある松田が、俳優としても十分なポテンシャルがあることがわかったのは、フジにとって明るい希望材料だ。これならば、どんなドラマもこなしてくれるだろう。TVerのお気に入り登録など、数字は寂しいが、松田の演技力が証明されただけでも今作は成功だと言える。松田が今後のフジテレビドラマの顔になることは、十分にある。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。