■よくできている『イグナイト』だが……
今回は、三山演じる高井戸がメインだった。三山は、俳優としてのキャリアはまだ浅いが、クールながらも“いい奴”な部分、さらにその内側にある“熱い思い”を微妙に感じさせるのがうまい。番組公式のインタビューによると、間宮や仲村ら共演者から役作りの学びも多いようなので、このタイミングでの活動休止はもったいない。
クセの強い役柄を演じる俳優陣もいいのだが、本作は脚本や演出もいい。最後に来る“どんでん返し”も、そこに至るまでの経緯を丁寧に描いていて、視聴者を驚かせる効果が大きい。今回の高井戸の過去の因縁も腑に落ちるもので、スッと胸に入ってきた。ご都合展開だらけで違和感を覚える、阿部寛(60)主演の『キャスター』(TBS系)とは大違いだ。
それでも、視聴率や配信の数字が伸びないのは、毎回のエピソードがよく出来ている一方で、本筋の5年前のバス事故の問題が、なかなか進まないからだろう。今回のラストで謎の男性(杉本哲太59)が映り、やっと黒幕が出てきたようだが、彼が何者なのかもわからない状態。「次にどうなるのか?」という仕掛けが弱いと、視聴者を引き付け続けることは難しい。
物語は終盤に入ってきて、次回は上白石萌歌(25)演じる弁護士・伊野尾麻里がメインとなる。これで「ピース法律事務所」の若手3人の背景を描き終え、本筋に向けて、物語が一気に加速していくだろう。今後の展開に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。