■『めおと日和』は雰囲気こそ明るいが…
そんな『あんぱん』の制作陣は、やなせさんが悲惨な戦争で痛感した“飢えた人に一切れのパンを与えることは、揺るがない正義”という哲学、その経験から『アンパンマン』が生まれるまでを描くにあたり、“戦争”をしっかりと描くことを明言している。脚本担当の中園ミホ氏は、
《皆さんが驚くぐらいしっかり戦争を描きます。反対意見もありましたが、やなせさんを描くってことは戦争を描くということですから》(4月26日配信の『婦人公論.jp』)
と、語っているのだ。
「戦死してしまった豪と、それに触れて呆然とする蘭子。あまりにも切ないシーンでしたが、『あんぱん』はこの先にも、また戦争の悲劇が多く描かれることになるでしょうね……」(前出の女性誌編集者)
『あんぱん』がシリアス路線の一方で、ラブコメが主体で戦前が舞台の『めおと日和』は、雰囲気は明るい。
しかし、次第に悪化していく社会情勢や、瀧昌(本田)が頻繁に、しかも多くを説明できずに長期間の任務に送り出され、なつ美(芳根)が無事を祈る姿が何回も描かれていて、やはり待たされる側の辛さを描いている。
5月8日の第3話では、なつ美が瀧昌に武運長久(※戦場での幸運が長く続くことを願う言葉)を意味するトンボ柄のカフスボタンをプレゼントする際に、「“武運長久なんて、重いかな~っ”て。戦地になんて行かないのに」と照れ笑いするも、瀧昌が先日職場で「12月のロンドンでも会議も決裂したのか」「海軍の長い休暇もこれで終わりか」などの会話が聞こえてきたことを思い出し、表情が曇る、というシーンがあった。
同回では瀧昌が船に戻ることを知ったなつ美が必死に明るく振舞うも涙をこらえきれず、瀧昌がそっと肩を抱くと、ただ「寂しい……」と漏らし、願掛けとしてなつ美が瀧昌の髪を切ってあげる――というシーンが描かれた。
また、22日放送予定の第5話では、瀧昌がお世話になっている上官の妻・郁子(和久井映見/54)がなつ美に「(軍人は)あす、有事があってもおかしくない」と話し、なつ美があらためて軍人の妻として自覚を強くする、という話が描かれると予告されている。
幸せな日常を描きつつも戦争の影を感じさせ、そして待たされる辛さを描く『めおと日和』には、
《1年後に日中戦争 5年後には太平洋戦争が始まると思うと幸せなシーンですら泣けてくる ドラマがそこまで行かなかったとして2人のその先想像しちゃう》
《戦争の足音がどんどん近付いている…。瀧昌さまは絶対帰ってきてください!》
《実際この時代を生きていた人がいたわけで。夫や子の帰りをただひたすらに待つ人や、戦地に飛び込んでいく人、そのほかにも。今でこそドラマとして見てるけど、100年も昔じゃないんだよな〜と、考えながらも見ています》
《なんか改めて1週間待つのも苦しいのに2ヶ月も瀧昌様の帰りを待つなつ美ちゃんってほんとにめちゃくちゃ寂しくて苦しいんだろうな........》
といった、やはり戦争の苦しさに言及する声が多く寄せられている。
「『あんぱん』と『めおと日和』は、アプローチの仕方は違いますが、しっかりと戦争を描き、平和についても深く考えさせられる作品ですね。だからこそ令和の視聴者にも強く刺さる作品として、広く支持を集めているのではないでしょうか」(前同)
今後も辛いドラマが描かれると見られる『あんぱん』。『めおと日和』と合わせて、注目されることは間違いないだろう。