■2023年に社会現象を起こした作品が“きっかけ”か――
なぜ、こうも“テレビ局もの”作品が量産されているのか――前出の民放キー局関係者は言う。
「“二匹目のドジョウを狙う”という言葉がありますが、テレビドラマの世界では、何かヒットしたテーマがあれば、それに刺激を受けたドラマプロデューサーが似たような企画を考えることが多いんです。
ただ、企画書を作り、それが採用されて正式に“制作OK”が出るまでが、早くて半年から通常は1年程度かかります。そこから、俳優のキャスティングに入り、スタッフやロケなどの撮影準備に入るわけですから、さらに半年から1年程度はかかる。ですので、最初に企画を出してから実際にドラマが放送されるまでには、どれだけ早くても1年、普通は2年くらいかかるということですね」
つまり2025年の春ドラマは、およそ2年前の2023年頃には企画されていたことになる。そして、その頃にはあるエンタメ作品が大ヒットしていたのだ――。
「当時アニメ第1期が放送され、社会現象を巻き起こした『【推しの子】』。同作が、25年4月期の“テレビ局もの”ドラマの量産につながったのでは、と見られているんです」(前同)
『【推しの子】』は、原作:赤坂アカ氏、作画:横槍メンゴ氏による漫画作品。突然の死を遂げた天才アイドル・アイの死の真相を探るべく、アイの隠し子である双子の兄妹が“芸能界の闇”へ踏み込む物語である。
アニメ第1期は23年4月期にTOKYO MXほかにて放送。24年には実写ドラマ・映画化したほか、26年にはアニメ第3期の放送も控えているなど、原作完結後もコンテンツは続いている。
「特にアニメ第1期はYOASOBIの主題歌『アイドル』の大ヒットもあって、多数の新規ファンが増えましたよね」(同)
楽曲『アイドル』はBillboard JAPANチャートで、史上最速でストリーミング累計9億回再生を突破したことで知られる。
また、原作漫画の売上はアニメ化直前の23年3月時点では450万部だったが、アニメ化により人気が爆発。同年7月に1200万部を突破した。
作品名が『ユーキャン 新語・流行語大賞』にノミネートしたり、『Yahoo!検索大賞2023』を受賞するなど、当時『【推しの子】』は大ブームだった。
「そんな『【推しの子】』旋風は、当然ながらテレビ界でも大きな話題になりました。そして、多くのプロデューサーが同作のヒットを受けて、“芸能界、テレビ界の裏側”を描くドラマはアリだな……”となったと言われていますね」(同)
芸能界が舞台の『【推しの子】』では、恋愛リアリティショーやドラマ制作の背景、芸能人による意図的なマスコミへのリーク――テレビ界や芸能界の生々しい「裏側」が多く描かれている。
「『【推しの子】』がまさにそうですが、テレビ界や芸能界というのは視聴者にとって身近な存在である一方、“裏側”というのはなかなか見えてこない。ですので、多くの人が興味を抱くジャンルですよね。
そうした経緯があり、テレビドラマ界で“テレビ局や芸能界を舞台にした作品をやろう!”と企画が動き、それが2年後の今年の4月期に実現した――というのが言われていますね。
7月期の櫻井さんの『放送局占拠』を含め、それぞれ中身は全く違いますが、やはりテレビ局の内部、芸能界の暗部というのは、まだまだ需要があるのではないでしょうか」(同)
またしばらくして同じようなテーマのドラマが連続したら、その時から2年前を振り返れば、なぜ制作されたかが分かるのかも。