■実はリアルな『めおと日和』

 そのため、X上では《6話も最高だったなぁ。結婚前のエピソードはありがちパターンなのに、あの2人だと「奇跡!」って思った》《お布団入ってからのシーンで涙が出た、芳根京子ちゃんの清潔感がすごい! 瀧昌さまはかわいい。なんでこんなに癒されるのかなあ》などと、視聴者の称賛の声が相次いでいた。

 つい思い浮かべるのが、同じ時代を描く『あんぱん』だ。“うぶキュン”を徹底的に描き、戦争の影はスパイス程度にとどめている本作。それに対し『あんぱん』はのぶ(今田美桜/28)への次郎(中島歩/36)の求婚エピソードこそロマンチックだったが、新婚生活のシーンは次郎が長い航海に出ていくので、ほんの少し。

 一方、戦争については、陸軍への乾パン提供をめぐって、のぶは、戦争と関わりたくないという妹・蘭子(河合優実/24)と対立し、ヤムさん(阿部サダヲ/55)は苦渋の末に乾パンを作るが、姿を消すことに。さらに、次郎の死亡フラグや、嵩(北村匠海/27)の出征など、かなり長い尺が割かれている。

 そんな、リアルに戦争を描こうとしている『あんぱん』に比べると、『めおと日和』のなつ美と瀧昌は浮世離れしているかもしれない。しかし、戦争に翻弄された時代であっても、個人に目をやれば、ちゃんとそこにロマンスはあったはずだ。“どんな時代や状況でも人は恋をする”ということを描いたのが、『めおと日和』のすごいところであり、画期的なところだろう。

 配信サービス・TVerのお気に入り登録数が100万を超え、今期のドラマ部門2位の『対岸の家事~これが、私の生きる道!』(TBS系/火曜よる10時~)に肉迫。ニュースサイト『モデルプレス』の流行語大賞2025上半期の流行語20ワードに、瀧昌がよく発するセリフ「問題ありません」が入るなど、社会現象レベルになっているが、その裏には斬新な視点があったのだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。