日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。夜の社交場で起きている異変に迫る!

 かつて「夜の社交場」としてサラリーマンの癒しと憩いの場だったキャバクラですが、令和の時代に入り、その存在感は急速に薄れつつあります。

 東京商工リサーチによれば、2024年上半期(1~6月)の「バー、キャバレー、ナイトクラブ」の倒産は過去10年で最多の47件にのぼりました。前年同期比161.1%増で、キャバクラ関連の倒産も160.0%増と異常な伸びを示しています。これは一時的な不振ではなく、構造的なキャバクラ離れが進んでいる証拠だと考えられます。

 昭和から平成初期にかけては、接待や打ち上げ、昇進祝いといった会社の慣習とキャバクラ文化が深く結びついていました。

 キラびやかな衣装に身を包んだ女性との会話やお酒、非日常空間は“社会人のステータス”とされてきました。しかし今、その価値観は若者たちにはまったく通用しなくなっています。

 その要因の一つが若者の“アルコール離れ”。2020年代に入ってからの調査では、20代前半の約半数が「月に一度も飲まない」と答えています。健康志向の高まりや飲み会での上下関係・強要文化への嫌悪感も重なり、「そもそも飲まないからキャバクラは選択肢にない」という若者が増えています。

 都内のキャバクラ経営者は「昔は“飲めるようになったら一人前”の時代でしたが、今の若い世代は“飲まないほうがカッコいい”という感覚を持っています。飲めない、飲まない、飲みたくない──この三拍子そろった世代にはキャバクラは響きません」と嘆いていました。実際、お酒が苦手でも楽しめる「ノンアル営業」も始まっていますが、来店者数は伸び悩んでいます。「酒を飲んでテンションを上げる」という夜の定番自体が時代遅れになってしまったのです。

 また、物価高騰で消費者の「コスパ意識」も高まっています。キャバクラで一晩2万〜5万円という出費は負担が大きく、ネット上には「高すぎて緊張するだけ」「同じお金なら旅行に行きたい」といった現実的な声も多く見られます。一方で、ガールズバーやコンセプトカフェ(通称“コンカフェ”)など低価格で楽しめる新業態が人気に。女性との会話を楽しむ点は共通しつつ、「気軽さ」「価格」「カジュアルな雰囲気」の面でキャバクラは完全に遅れを取っています。