■『キャスター』は脚本の制作体制が問題か
毎回、報道局の各スタッフがフィーチャーされる展開だが、前フリもなくエピソードにツッコんでいくので、いまひとつ物語にハマれない。今回の山井(音尾)も、“部下思い”というキャラはなんとなく描写済みだが、父親の存在を示唆する描写は一切なく、急に出てきた感がぬぐえない。物語の展開はスリリングだったが、どこか他人事のような感じがしてしまったのは、そのせいだろう。
次回予告で、“仲間の死”が示唆されたため、視聴者の間では「死ぬのは誰か?」が考察されているが、《山井かな。父親が暗殺されそうになったのを庇って、自分が死んでしまうとか》など、山井を予想する声のほか、本橋(道枝)、茨城支局員・安西(小須田康人/63)などと、見事に意見はバラバラ。毎回、唐突に話が動くため考察しづらいのだろう。
また、不自然で強引な展開は、永野の不倫疑惑報道の影響で、彼女の登場シーンをあとから編集でカットしているためだと考える視聴者が多かった。しかし、実際は、4月24日発売の『週刊文春』(文藝春秋)で報道された時点で、ほとんどのシーンは撮影済みだったうえ、第7話、8話は崎久保メインの回だったので、永野が原因ではなさそうだ。
本作は、6人の脚本家による共同脚本、「ライターズルーム方式」が採用されている。複数の視点で物語が作られるので、強引な展開にはならなそうだが、今回はうまく機能しなかったのかもしれない。日曜劇場は23年1月期放送『Get Ready!』も脚本家が6人いて、全話平均視聴率が9.4%と惨敗している。日曜劇場にとって、共同脚本は鬼門なのかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。