■『最後から二番目の恋』脚本の見事な手法

 大きな事件は起きず、基本はほのぼのしているが、千明(小泉)の加齢や、典子(飯島直子/57)の専業主婦としての葛藤など、実は生々しいシーンが連発する本作。今回も、啓子(森口)の退職をめぐる会社での居場所問題や、ドラマ班の年齢差による熱量の差など、リアルにもほどがあるぐらい。これらをすくいあげ、脚本で描き切る岡田惠和氏の力量はものすごい。

 また、今回は真平の告白シーンも凄まじかった。演じる坂口憲二が実際に難病を抱えていることは、多くの人が知っていること。ドラマのトピックにするというのは、一歩間違ったらあざとい印象を与えかねず、勇気がいることだ。それを感動的に描くことができた本作は、演者の力量もあるが、なにより脚本の素晴らしさが、視聴者の支持を集めたのだろう。

 X上には、《年寄りが、好きだの嫌いだの言っているのが、受けつけないと批判する人もいるけど、いやいや、これは現実ですよ。若い人は意味がわからないかもしれないけど、歳を重ねても、人間、生々しいのです。それが愛しいのです。このドラマは、それを捉えている》という声もある。

 指摘にある大人の恋模様はもちろん、生きていくうえでの葛藤や苦しみ、喜びを、『最後から二番目の恋』シリーズは見事に描いている。月9ドラマは全11話なので、本作も残すところ、あとわずか。終盤で、どんな生々しいシーンが描かれるのか、楽しみだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。