■『恋は闇』は“怪しい人”不足
視聴者の関心をあおる“考察もの”は、伏線などを確認するために見返したくなるので、配信サービスで強い。しかし、『恋は闇』はTVerのお気に入り登録数が57.3万(11日午後4時現在)と、ドラマ部門下位に沈み数字の伸びは今ひとつだ。原因はどこにーー。
それはシンプルに、恋愛要素が余計だったのだろう。今回も、万琴(岸井)が浩暉(志尊)と23年前に出会っていたことを思い出させるためとはいえ、2人がイチャイチャする旅行は必要だったのか? 幼いときの出会いなら別の見せ方でコンパクトにまとめ、怪しい人物の描写に多くの尺を使ったほうが、考察は盛り上がっただろう。
本作と同じ(※原案・企画の秋元康氏は除く)制作陣による、『あなたの番です』も『真犯人フラグ』も、人物描写を薄くして“匂わせ”に全フリしていたからこそ、考察が盛り上がった。一方、『恋は闇』は2人のイチャイチャ描写もそうだが、友人や同僚についても、しっかり描かれている。
ドラマとしては正しいのだろうが、そんな人物描写に尺が取られて、“匂わせ”が弱くなっているのは確か。それならば、いっそ、万琴の後輩の新人ディレクター・木下(小林虎之介/27)や、ベテランカメラマン・臼井(おかやまはじめ/61)すらも、怪しく見せたほうが視聴者をかく乱させ、考察が盛り上がったのではないだろうか。
ドラマの作り方としては『恋は闇』は間違っていない。ただ、配信サービスのお気に入り登録数や再生回数狙いの考察ミステリーとしては、“匂わせ”要素が物足りなくなってしまった。数字が伸びない原因はそこだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。