広瀬すず(24)主演の『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)は、田舎育ちで天真爛漫な女性が音楽家になるのを夢見る青年と出会い、東京で夢や恋を紡ぐラブストーリーだ。第9話は、空豆(広瀬すず)はアンダーソニアをやめてパリへ行くことを決め、音(King & Prince永瀬廉/24)はテレビの音楽番組への出演で一躍、有名になる。お互いが好きな気持ちを抱えたまま、どんどん離れて遠い存在になってしまった。

■本当に離れてしまった、音と空豆

 雪が舞う街路で、泣き崩れる空豆に傘をさしてあげたのは、パタンナーの葉月(黒羽麻璃央/29)だった。すべてを失ったと泣き続ける空豆を、抱きしめた葉月の手は温かかった。だけど、それに恋愛の雰囲気は感じられない。葉月は、空豆をひとりの女性として魅力的に感じつつも、デザイナーとしての才能に惚れ込んでいた。空豆も、葉月を恋愛対象ではなく、仕事のパートナーとして信頼しているように見える。

 だから、セイラ(田辺桃子/23)が音に言った「あの2人、つきあうことになったんだって」などということは、どこにもないのだ。だけど、音はセイラの言葉を真に受けてしまう。空豆の慎重かつ大胆な性格を知る音にとって、それは本当のことなのだと感じてしまったのだ。

 それでもまだ繋がりがあった。音とセイラのユニット、ビート・パー・ミニットの衣装を空豆が担当するという話が残っていただろう。だが、これも音が所属するユニバース社の意向で頓挫してしまった。ショックを隠して、音との電話で「セイラよろしく頼むが」という空豆は、強くて優しい人だ。そして、音が「うん、分かってる」と返答したのも、音なりの精いっぱいの優しさだった。

 だけど、この会話で2人の距離が決定的になってしまった。大切な音にセイラを託す空豆の優しさ、セイラを託されたことで、空豆が自分たちから距離を取るのを感じた音、そして音の“分かってる”という言葉で、お互いの自分に対する気持ちに踏む込めなくなってしまったのだ。ああ、どれだけすれ違い続けるんだろう。たった2分31秒の通話に、「切なか。寂しか」のピークがきたかと思ったが、それを上回ることが起きてしまう。