■すれ違い続ける「好き」という想い

 スタジオの外で休憩を取る音が、空豆にメッセージを送る。「空豆。俺、お前のことが好きだった。今も、これからも好きだと思う」と、素直な想いを送信する。だけど、「いまさらなに言ってんだ」とつぶやいて、その送信を取り消してしまう。空豆は、お風呂あがりにメッセージを見て、音がなにを取り消したのかを考えているうちに想いが溢れてくる。そして、「音、私は、音が好きだ」と送信。だけど、運命のタイムリミットがきてしまい、送信を取り消してしまう。

 お風呂中とレコーディング中、それぞれのタイミングが合わなかっただけで、気持ちは同じ「あなたが好き」ということ。こんなに想い合っているいるのに、全然、繋がらないふたり。そして“送信した言葉を取り消した”という行為に「何を伝えたかったんだろう」と想いは募るばかり。

 それでも、2人で縁側でシャンパンを飲んで、約束の夏にはひと足早い3月の花火をしても、好きだと伝えることはなかった。来週には、パリへ旅立つ空豆。テレビの音楽番組に出演して、ユニバース社からの大きな期待を背負って成長し続ける音。もう、これが最後かという時、たまらず空豆が声をかける。

「手をさ、伸ばしたら届く? 音に届くと?」。そんな空豆が愛しくて、たまらず抱きしめてしまう音。こんな瞬間が、もっと早くきてほしかった。そして、スマホのメッセージではなく、言葉で「好き」と伝えることができていたらと思わずにはいられない。抱きしめ合っても繋がらない、細くて赤い糸のような2人の想い。次回最終話、2人は想いを伝え合えるだろうか、夢を叶えているのだろうか。
(文・青石 爽)