■観光の盛り上がりと環境の保全を両立
さらにナイトツーリズムは、観光の持続可能性という視点でも重要です。日本各地では、地域の文化や自然環境を活かした夜間イベントが開催されており、それが地域独自の観光資源となっています。
「環境省認定の『日本一星空が綺麗な村』である長野県・阿智村では、光害の少ない自然環境を活かし、『日本一の星空』を売りにした星空観察ツアーが大成功を収めました。こうした活動は、地域の環境保護意識を高めると同時に、観光と環境保全の両立を実現するモデルケースとして注目されています。星空を見上げる時間は、心身をリフレッシュさせてくれ、普段のストレスから解放されるという声も少なくありません。教育的な側面もあり、子供たちにとっては天文学への興味を引き出すきっかけにもなっているようです」(旅行サイト編集者)
このように、ナイトツーリズムは単なる「夜遊び」ではなく、文化的・経済的・教育的な価値を兼ね備えた観光スタイルとして成立。特にインバウンド観光との相性が良く、外国人観光客からも「日本の夜は特別な体験ができる」と高く評価されています。日本特有の文化体験やライトアップイベント、夜間開催の祭りなどは、外国人旅行者にとって強い魅力となっており、今後ますますその需要は高まっていくと見られます。
一方で、ナイトツーリズムには課題も。最大の問題は地域住民との共生です。夜間に人の流れが増えることで、騒音や光害などの影響が懸念されており、イベントの運営には細心の注意が求められます。また、交通インフラの整備や警備体制の強化など、安全面への配慮も欠かせません。訪れる人の満足度を高めると同時に、地域住民の生活環境を守るための仕組み作りが、今後のナイトツーリズムの成否を左右すると言えるでしょう。
気候変動や猛暑の影響で、日中の観光が難しくなっている現代において、夜間の涼しい時間帯を活用するナイトツーリズムはますます有効な選択肢になってきそうです。
プロフィール
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。