■『めおと日和』の“事件が起きない”新しさ

 指摘にあるとおり、物語としては、そんなに新しいものではない。しいて“新しさ”をあげれば、戦時中のラブロマンスという点だ。戦争による悲劇要素はゼロで、戦争は視聴者の不安をあおって気持ちを高める仕掛けに使い、徹底的にキュンにこだわっている本作。これまで、戦中の悲恋を描くドラマはあったかもしれないが、ここまでメロいのはなかった。

 ありそうで実はなかった恋愛ドラマという点では、今期ドラマの中でヒットしている『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系/月曜よる9時~)も同じだ。こちらは50代以上の男女の恋愛で、しかも結婚などにはこだわらない、新しい大人の関係を提示しているのが斬新だ。どちらも同じフジテレビ系というのが、興味深い。

 最近のGP帯の連続ドラマは、ストレートな恋愛ものでは視聴者の支持を集めにくい。価値観が多様化したこともあって、“生きづらさ”などの社会に対する問題提起を入れ込んだり、はたまた恋愛と考察ミステリーと合体させたりなど、各局が恋愛ドラマ作りで苦労している。

 その点、『めおと日和』も『最後から二番目の恋』も大きな事件は起きず、ほんわかした日常を描いているだけに見える。だが、50代以上の恋、戦時中のうぶキュンといった、新鮮な要素があれば、ここまで視聴者に支持される。実は画期的なことなのかもしれず、意外な視点で描くほんわか恋愛路線は、今後のフジテレビ恋愛ドラマの新しい潮流になるかもしれない。

 社会現象レベルの人気になっている『めおと日和』もラストが近くなっている。第9話は、なつ美と瀧昌は結婚1年目を迎え、なつ美の二番目の姉・あき奈(咲妃みゆ/34)の出産を手伝いに実家へ。2人は自分たちの子どものことを意識し始めるという。深見と芙美子も新しい展開を迎えるようで、最後までキュンな展開が貫かれそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。