「お、お金がない……」

 本サイトのD記者は給料日を前にこう嘆いていた。

 それもそのはず、20代半ばで未婚のD記者は日々、外食三昧だからである。全国紙経済部記者が話す。

「チェーン店の値上げが全国的に止まりません。カレーで有名なカレーハウス『CoCo壱番屋』は客単価が1208円にまで上昇。その影響からか、昨年9月から8か月連続で客数は前年割れを記録しています」

 先日、編集部の近くにある都心の『CoCo壱番屋』でランチを食べたというD記者が深刻な表情で話す。

「婚活中なので縁起担ぎにと、『ロースカツカレー』に『シーザーサラダ』、食後の『アイスコーヒー』をセットで頼んだらお会計額は1403円(税込=価格は編集部調べ、店舗により異なります・以下同)でした。ファストフードとは名ばかり。これでは日常使いなんてとてもできません!」

 流通小売業界に詳しいコンサルティングのスペシャリスト、岩崎剛幸氏は外食産業が立たされる苦境について語る。

「原価やウクライナ問題に端を発したエネルギー価格の高騰で、ある程度の値上がりはやむをえない状況です。とはいえ、客の予算を度外視した価格設定では、客離れを起こして経営的に難しくなる。価格が上がっても顧客が離れない施策を、各社は考えていく必要があるでしょう」

 D記者のお財布事情を少しでも助けるべく、本サイトでは岩崎氏監修のもと、チェーン店各社の値上げ事情を分析してみた。

 まずは、自身が執筆した記事が本サイトで配信された後に必ずD記者が立ち寄るという都内の『吉野家』から。

「2014年12月に牛丼の並盛が1杯380円(税込)だったのが、今では498円です。この前は、普段より少し豪華にしてみようと『牛丼』(498円・税込)に『半熟卵』(118円・税込)をトッピング。『とん汁』(250円・税込)を付けたところ、会計額は866円になってしまいましたよ~」(D記者)

高価格化の波は吉野家にも ※撮影/編集部

 今年4月10日にも値上げを発表したばかりの『吉野家』。この背景にはどのような理由があるのだろうか。

「米が必要不可欠な牛丼店では、コメ価格高騰の影響を強く受けています。直近の3年間でも23年10月、24年7月、今年4月と3度の価格改定があった。注文時にトッピングなどを追加すると会計額はすぐさま1000円前後に達します。一昨年、ニューヨークを訪れた際に現地では並盛が9.88ドル(およそ1430円)でしたが、いずれ日本でもこの価格に近づくのではないかと気になっています」(前出の岩崎氏)

 このままでは『吉野家』の利用も困難になると感じたD記者が次に向かったのは、かつて“デフレの王者”との異名もとった『マクドナルド』だ。

 今も昔と変わらず、学生から家族連れまでが足しげく通う『マクドナルド』。D記者も学生時代から愛してやまないという『ビックマック』に『ポテトのMサイズ』、『コカ・コーラ』のセットを関東近郊にある実家近辺の『マクドルド』でオーダーすると合計で780円(税込)。日韓W杯が開催された02年にはハンバーガーが1つ59円(税別)で売られていたことを考えると隔世の感を禁じ得ない。デフレの王者で起きた値上がりの背景を前出の岩崎氏が分析する。

「世界中に店舗展開をする『マクドナルド』は、その店舗数の多さを活かして安価で大量に仕入れます。だから、仕入れ価格は他社と比べて比較的安定しているはずなのです。それでも物価高騰の影響を受け、22年3月からの3年間で6回の値上げをしています。安価で知られたはずの『ハンバーガー』も130円から190円にまで値上がりしています」