■ランチ1500円時代へ突入も
束の間の贅沢としてD記者が休日に愛食するハンバーグチェーン店の『びっくりドンキー』にも高価格化の波は押し寄せている。さる休日にD記者が関東近郊にある実家付近の店舗で『オムデミチーズバーグディッシュ』(Mサイズ1590円・税込)と『コーラ』(Lサイズ360円・税込)を頼むと締めて1950円。ワンプレートでオムライスとチーズとハンバーグを楽しめる点に喜びを噛みしめていた大食漢のD記者だが、およそ2000円が財布から一瞬で無くなることに気づき呆然。
「もともと1200~1300円を予算としていたびっくりドンキーは、ファストフードというよりはレストランに近い。比較的高めな単価設定なので、今年4月に平均で39円の値上げをしましたが、さほどの値上がりは感じないかもしれません。しかし、2019年から7年連続で値上げが続いており、財布へのダメージはボディーブローのように蓄積しています」(前出の岩崎氏)
飲み会後の〆の一杯としてD記者が学生時代から愛してきた大手ラーメンチェーン店である『天下一品』は、価格高騰も相まって渋谷店や新宿西口店を含む首都圏にある10店舗が今年の6月末で閉店する。その理由を岩崎氏が分析する。
「濃厚な“こってり系ラーメン”が世にあふれて独自性がなくなってしまったことが一番の理由でしょう。また、10年前には648円(税込)だった『こってりラーメン』が今では都市部で940円(税込)に。トッピングに『味玉』(150円・税込)を付ければ一気にお会計額は1000円超え。この値上がりが“客離れ”を引き起こした一因ではあるでしょう」

とはいえ、企業努力はあれど、各店の値上がりは避けようもない。
「昭和から平成にかけては、お昼時は外で牛丼を食べて、帰りに缶コーヒーを買っても500円で事足りました。しかし、ランチの予算は20年前後には800円、物価が上がり始めた23年には1000円となり、現在では1200円となりました。この調子では来年以降の値上がりも免れず、ランチ価格の相場は1500円へと突入するかもしれません」(前同)
今後、ランチの形は大きく変わっていくだろうと岩崎氏は予想する。
「1500円のランチを日常的に食べるには、消費者の所得が増えないことには難しいでしょう。値上がりの幅が小さいコンビニやスーパーのおにぎりやカップ麺を買ってくる人も増えてくるはず。お弁当を持参する人も、コメの値上がりを気にして白米をはずして、焼きそばや焼きうどんにするなど、庶民の食に対する意識は今後、目まぐるしく変わっていくはずです」
今後は外食を控え、手料理に精進しようと決意を新たにするD記者であった。
プロフィール
岩崎剛幸(いわさき・たけゆき)
流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。